研究課題/領域番号 |
16K15352
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸 玲子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特別招へい教授 (80112449)
|
研究分担者 |
荒木 敦子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 准教授 (00619885)
齊藤 卓弥 北海道大学, 医学研究科, 特任教授 (20246961)
三浦 りゅう 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 学術研究員 (20506414)
山崎 圭子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任助教 (60732120)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 環境疫学 / ADHD / エピジェネティクス / DNAメチル化 / 胎児期曝露 |
研究実績の概要 |
今年度は、胎児期曝露に起因するメチル化変化部位の特定を目的に、申請者らが先行研究で行った遺伝子網羅的メチル化解析により得られた45万CpGサイトのメチル化値と妊娠中母の環境化学物質濃度との関連を解析した。環境化学物質として解析したのは、母体血中の有機フッ素化合物、フタル酸エステル類、および、臍帯血中のビスフェノールA(BPA)であり、いずれの場合も曝露濃度と統計学的に有意に関連するメチル変化を見出した。また、それらのメチル化変化部位が位置する遺伝子の中には、in vivo/vitroの実験で化学物質曝露によるmRNA発現への影響が報告されている遺伝子が含まれており、胎児期の環境化学物質曝露がメチル化への影響を介して遺伝子発現に影響を及ぼす可能性が示された。 また、環境化学物質曝露によるメチル化変化と発達障害との関連を調べるため、本研究でターゲットとしているADHD、および、自閉症スペクトラム(ASD)に関連することが先行研究により示唆されている遺伝子と曝露によるメチル変化部位が位置する遺伝子とを比較した。さらに、曝露によりメチル化が変化する遺伝子の機能をデータベースを参考に調べ確認した。それらの結果、胎児期の環境化学物質曝露が発達障害・神経発達に関与する遺伝子のメチル化に影響を及ぼしていることが示された。 上述の環境化学物質曝露に起因するメチル化変化領域のADHDへの影響を検討するため、前向きコホート内・症例対照(ケース:n=245, コントロール:n=317)の臍帯血DNAを用いて、曝露と関連するメチル化領域のメチル化率を次世代シークエンサーを用いたバイサルファイトシークエンス法によ測定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた環境化学物質の中で、ダイオキシン・PCB以外の物質について45万CpGサイトのメチル化値と曝露濃度との関連を解析し、統計学的に有意に関連するメチル変化を見出すことがでた。さらに、胎児期の環境化学物質曝露が神経発達に関係する遺伝子のメチル化に影響を及ぼしていることを示し、現在、環境化学物質曝露に起因するメチル化変化領域とADHDへ関連を、前向きコホート内・症例対照研究により検討中であり、おおむね順調に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)ダイオキシン・PCBの胎児期曝露と45万CpGサイトのメチル化値との関連を解析する。 2)ADHDと環境化学物質曝露、さらにメチル化変化の影響を解析するるため、ADHDのコホート内症例対照研究、または、ADHD疑いを含むサブコホートにおいて、曝露測定とメチル化率測定をさらに進める。 3)成長後のADHD症状と臍帯血DNAメチル化変化率との関連を検証した後、DNAメチル化変化からADHD発症までの経路に関わる生物学的指標をLC/MS-MSやELISA法により測定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
環境化学物質曝露とDNAメチル化との関連は、すでに取得したデータをも用いて解析を行い、費用が最低限に抑えられた。また、新規に行ったDNAメチル化率の測定はパイロシークエンサーにより行う予定であったが、別の研究費による次世代シークエンサーでの測定ができたため、今年度の使用がなくなったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
ADHDとの関連を検討するための曝露測定およびメチル化率の測定、生物学的指標のLC/MS-MS、または、ELISA法での測定に必要な実験用試薬品費用として使用する。
|