研究課題/領域番号 |
16K15354
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
成田 暁 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (50459468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疫学 / ネットワーク理論 |
研究実績の概要 |
本研究は、分析疫学研究において日々大規模化するデータを効率的かつ最大限に活用し、個別化予防・医療の柱の一つである、高精度疾患発症リスク評価システムの確立を目的としている。3年間の予定実施期間中、1年目(平成28年度)は、モジュラリティや中心性など、ネットワーク理論の基本事項を整理、体系化し、因果関係や相互作用に起因する複雑な関連構造を解析するためのアルゴリズム構築に向けた検討を行った。 また、代表者が所属している東北大学東北メディカル・メガバンク機構では、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構と共同で、宮城、岩手両県在住の地域住民を対象としたコホート調査を、平成25(2013)年度より実施している(東北メディカル・メガバンク事業)。 そこで本研究では、地域住民コホート調査参加者63,002人を対象に、甚大な被害を受けた沿岸部と、被害が比較的小さかった内陸部のメンタルヘルスに関するリスク差に関する解析を行った。これは、東北メディカル・メガバンク事業-地域住民コホート調査のデータセットを上記アルゴリズムの検証に用いるための予備的検討としての側面も有する。解析の結果、東日本大震災後2~5年を経てもなお、宮城、岩手両県の沿岸部居住者は、内陸部居住者と比較して、心理的苦痛、抑うつ症状、不眠、およびPTSRありのリスクが有意に高かったが、その差は家屋損壊や近親者の喪失の影響を強く反映しており、特に住居や近親者を失った者に対するケアが引き続き重要であることが示された。 また、七ヶ浜健康増進プロジェクト(東日本大震災以降、宮城県七ヶ浜町と東北大学が共同で実施している健康づくりへの取組み)のデータをもとに、大震災における外傷と心理的苦痛の関連を検証した結果、両者の間に有意な関連が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目である平成28年度は、ネットワーク理論の基本事項を整理、体系化し、因果関係や相互作用に起因する複雑な関連構造を解析するためのアルゴリズム構築に向けた検討を行った。現在、学会発表および論文化に向けて準備を進めている。 また、東北メディカル・メガバンク事業-地域住民コホート調査参加者63,002人を対象に、内陸部と沿岸部のメンタルヘルスに関するリスク差に関する検討を行った。その結果、東日本大震災後2~5年を経てもなお、甚大な被害を受けた沿岸部の居住者は、被害が比較的小さかった内陸部居住者と比較して、心理的苦痛、抑うつ症状、不眠、およびPTSRありのリスクが有意に高く、特に住居や近親者を失った者に対するケアが引き続き重要であることが示された。本成果は、第27回日本疫学会学術総会(平成29年1月25-27日、甲府市)にて発表を行った。こちらは引き続き検討を行う予定である。 また、七ヶ浜健康増進プロジェクトのデータをもとに、大震災における外傷と心理的苦痛の関連を検証し、両者の間に有意な関連を認めた。こちらについては、第75回日本公衆衛生学会総会(平成28年10月26-28日、大阪市)にて発表を行った。こちらについては、早急に論文化の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ネットワーク理論を応用した変数間関連構造解析アルゴリズムのソフトウェア化、および東北メディカル・メガバンク事業-地域住民コホート調査データへの適用を通じた検証を行う。具体的には、ソフトウェアを本データに適用し、データが実際にスケールフリー性を示すか、またコミュニティ構造(ハブノードを中心とする比較的密なクラスタ)が適切に検出されるか、などを詳細に検証する。また前述の通り、学会発表および論文化を行う。 また、地域住民コホート調査のうち、これまでは集団型特定健診参加型(相乗り型)と呼ばれる調査から得られたデータを解析対象としており、宮城、岩手両県で実施された特定健診の会場にて、調査への参加に同意し、血液、尿、および調査票への回答があった対象者から得られたものである。 今後は、宮城県内各所に設けられた地域支援センター7箇所に来所し、血液、尿、および調査票に加え、体組成、頚動脈エコー、握力など、より詳細な検査を行う「センター型調査」の参加者約14,000人のデータ(岩手については未定)を対象として同様の解析を行い、さらに上記アルゴリズムによる変数間関連構造の詳細な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度は、例年開催されていた日本人類遺伝学会の年次大会が開催されなかったため、また、名古屋大学生物機能開発利用研究センターでの研究打合せを欠席(体調不良のため)したことにより、予定していた支出がなされなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度は、例年通り日本人類遺伝学会が開催されるため、そちらへの参加を予定している。また当部局の田宮 元教授を分担研究者として追加登録したため、それに伴う書籍購入費や学会参加費に充当する。
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