研究実績の概要 |
今年度は研究課題の一つであった、急性心筋梗塞病院到着前心肺停止症例の特徴について解析を行った。2010年から2012年までの3年間のデータで、登録された3663例の心筋梗塞のうち、経皮的冠動脈形成術を含む循環器救急医療を提供可能な医療機関に到着できた症例は1743例(47.6%)で、残りの1920例は死亡小票より登録された。死亡小票より登録された病院到着前心肺停止症例は到着例に比べ高齢で、女性が多く、また発症季節は冬季(12月から2月)が多かった。多変量ロジスティック解析の結果、高齢(10歳上昇毎, Odds ratio 1.55, 95%信頼区間 1.47-1.66, P<0.01)、女性(vs.男性, Odds ratio 1.26, 95%信頼区間 1.09-1.47, P<0.01)、冬季発症(vs.夏季発症, Odds ratio 1.36, 95%信頼区間 1.12-1.66, P<0.01)で病院到着前心肺停止のリスクが高まることが分かった。超高齢者では積極的に加療を望まないケースもあるため、85歳未満の集団に限定して同様の解析を行ったが同様の結果を認めた。現在登録データが2010年から2014年までの5年間分蓄積(約5500症例)できており、それを用いて同様の解析を行いより結果が妥当なものであることを検証する予定としている。 本解析はこれまでに明らかになっていなかった急性心筋梗塞の急性期医療機関到着前の心肺停止症例の割合とその特徴を明らかにした初めての解析であり、病院前まで包括した治療閃絡のうえで重要な基盤となりうるデータである。今後はこれに加えて急性期医療機関までの地理的因子がどのように影響しているのかを地理情報システムを用いて検討する。
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