2010年から2015年の6年間に、山形県内の登録協力医療施設からの全件報告および全県の死亡小票調査から登録された山形県で発症した急性心筋梗塞患者6978名について検討を行った。登録患者のうち3722名(54.0%)が病院到着前に死亡していた。多変量ロジスティック回帰分析の結果、高齢(1歳上昇毎; OR 1.044; 95%CI 1.040-1.049; P<0.01)、女性(vs男性; OR 1.367; 95%CI 1.227-1.523; P<0.01)、冬季発症(12-2月) (vs夏季発症(6-8月); OR 1.462; 95%CI 1.268-1.686; P<0.01)が病院到着前死亡に独立して関連していた。元々急性心筋梗塞の発症には季節性変化があり、冬季に罹患率が高まることは報告されていたが、さらに公衆衛生学上特筆すべき所見であると考えられた。 次に当初症例単位で住居と病院の道路距離と病院到着前死亡の関連を明らかにすることを目標としていたが、個人の住所データを用いることについてデータを所有する山形県との協議の結果困難と判断し、市町村単位での症例に関して記述疫学および緊急冠動脈インターベンションが可能な病院との地理空間分析を行った。 最後に、院外心停止の状態で患者が病院に収容された後の治療実施状況及び予後について検討するために院外心肺停止患者の全国搬送記録データ(ウツタイン統計)および(JAAM-OHCA registry)を用いた。全国の医療施設に院外心肺停止状態で搬送され急性冠症候群と診断された730名について検討したところ、神経学的予後30日後生存していたのは24.4%であった。うち、冠動脈造影検査を施行されたのは対象症例の54%(396名)であり、経皮的冠動脈インターベンションの実施と目標体温管理は神経学的予後良好と有意に関連していた。
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