研究課題/領域番号 |
16K15356
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西浦 博 北海道大学, 医学研究科, 教授 (70432987)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 疫学 / 感染症流行 / 統計モデル / 数理モデル |
研究実績の概要 |
これまでの国内外における感染症流行終息の判定は,必ずしも科学的な判断根拠に基づいて実施されてこなかった.本研究の目的は感染症の流行終息を客観的かつ定量的に判定する手段を構築することである.本研究の最終到達目標は3つあり(i)感染症流行終息の判定方法を確立すること,(ii)エボラ出血熱やMERSなど観察データ分析を通じて原著研究による政策実装を実施すること,(iii)推定のためのR言語コードを利用して社会実装のための仕掛けを設定すること,である.研究期間が2年間に限られている一方,内容的に挑戦的なため,流行終息判定の方法論の確立が必ず達成できるよう工夫する.
1人の感染者あたりが生み出す2次感染者数分布や感染源の発病から2次感染者の発病までの時間間隔などを駆使して,発見的モデルや確率過程モデルなど複数のアプローチで流行終息を判定し,比較検討すべく初年度研究に取り組んだ.初年度は,特に数理的定式化と疫学的問題の明確化に着手した.発見的モデルには,感染源の発病から2次感染者の発病までの時間間隔を意味する発病間隔(serial interval)の累積分布関数F(t)を用いる.2次感染者が仮に1人の場合,最近の感染者の発病後時間tが経過した際に未だ2次感染者が発生する確率は1-F(t)である.これに加えて1人あたりが生み出す2次感染者数の分布を利用すると時刻t以降に2次感染者が発生する確率が計算される.これについて,観察問題に対応した定式化・疫学データへの適合上での数理的想定の問題を特定する作業を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究論文の発表に予定通り対応できており,次の課題についても担当大学院生と十分に相談ができている.
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今後の研究の推進方策 |
エボラ出血熱やSARS,ポリオなど入手可能な流行データ整理を行い,感染しても発病し難いポリオと流行時の疾病統計が豊富なインフルエンザ・SARSのいくつかを対象として事例研究の報告を行う.モデル適合の可能な範囲を特定しつつ,エボラ出血熱データはWHOによる患者データベースを利用する.次年度作業を担当する大学院生(あるいは若手研究者)を学術支援職員として雇用し,感染者の全てが報告されない問題をモデル上で取り込む統計学的手法を検討する.
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