研究課題
これまでの国内外における感染症流行終息の判定は,必ずしも科学的な判断根拠に基づいて実施されてこなかった.本研究の目的は感染症の流行終息を客観的かつ定量的に判定する手段を構築することである.具体的には、以下の3点に課題を絞って最良の政策判断を得るための基礎的手法を確立すべく研究に取り組んだ。1人の感染者あたりが生み出す2次感染者数分布や感染源の発病から2次感染者の発病までの時間間隔などを駆使して,発見的モデルや確率過程モデルなど複数のアプローチで流行終息を判定し,比較検討する.エボラ出血熱など社会的注目度の高い感染症流行の終息を客観化し,妥当な政策判断のための数理的ツールを明示的に提供する挑戦的プロジェクトとして位置付けた.これまでにWHOによる政策判断あるいは厚生労働省の組織する審議会による判断においては,専門家意見など,必ずしも全て客観的とは言い難い根拠に基づいて判断が下されてきた.斬新な数理モデルに基づく終息判定方法を提供することにより,流行終息という感染症制御の課題を数理的な判定問題(感染者発生確率の閾値未満への低下あるいは目的関数を利用した最適化問題)として取り扱い,関連する公衆衛生政策を定量化および客観化可能であることを論文化して示し,その成果を広く示すことができる原著論文の執筆にまで至ることができた.エボラ出血熱やMERSのような目の前の社会的に重要課題に対応することを通じて,効果的に感染症行政に関わる政策判断に技術革新をもたらす貢献が可能である.従来の政策判断体制を一新する端緒とし,公衆衛生政策の判断根拠に関して責任の所在を明確にする機会にもなるものと期待される.
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