研究課題
放射線被ばくとリンパ系腫瘍との因果関係について多くの疫学研究が報告されているが、骨髄系腫瘍とは異なり一定の見解が得られていない。その一因として、これまでの研究はリンパ系腫瘍をホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫という非常に大まかな分類でのみ評価し、発症要因が異なると言われているB細胞系・T細胞系の区別や成熟系・未成熟系の区別がなされていない点が考えられる。本研究はリンパ系腫瘍を専門とする病理医による詳細分類を基盤に、これまでの研究にはない組織分類別リンパ系腫瘍の放射線被ばくによる発症リスク特性を明らかにする事を目的としている。本研究の遂行にあたり、事前に、長崎大学内倫理委員会において研究計画の承認を得て、さらに、長崎県がん登録室・長崎大学原爆後障害医療研究所におけるデータ利用承認も得た。研究初年度となる平成28年度は、データ解析の基礎となるデータセット構築のために、長崎県がん登録室より入手した1985-2012年に登録された匿名化コード番号別の悪性リンパ腫症例12,645件の素データセットのデータクリーニング作業をおこなった。素データセットには1)重複登録例、2) 悪性リンパ腫か白血病か区別の付かないコードの含有、3)同一症例に対する複数の類似ICD-Oコードの混在、4) 分類不能NOSコードの存在、などの問題点があり、分担研究者・研究協力者、および病理専門医と複数回の協議を重ね、これまでに11,378件の個別データを確定した。また、上記の作業と並行して被ばく者データベースとのリンケージ作業を依頼し、1,022件の被ばく者例を特定した。
2: おおむね順調に進展している
重複登録例が予想以上に多いなどの問題点があり、データクリーニング作業に時間がかかり、信頼性レベル分け作業のみ遅れたが、その他の行程は概ね本年度中の目標を達成している。
平成29年度は、初年度までに確定した11,378件の個別データを基に、病理学的観点と病因起因性の確実性の観点から組織分類をグルーピングする根拠について議論したあと、まず、遅れている信頼性レベル分け作業を行い、その後、データセットを全データセットと被ばく者データセットに分け、全データセットにおいては、集団レベルでの発症部位・発症年齢・組織型発生頻度などについて一般集団と原爆被ばく者集団を比較する疫学解析を行い、被ばく者データセットにおいては被ばく状況別発生頻度解析を行い、最終年度の平成30年度は両者を統合して、リンパ系腫瘍の発症と放射線被ばくとの関連を包括的にまとめる予定である。
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Tumori
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