研究実績の概要 |
本研究は1985-2012年に長崎県がん登録に登録されたリンパ系腫瘍のICD-O-3code情報を基に, 放射線被爆によるリンパ系腫瘍発症の特性を明らかにする事を目的とする. 本研究は2019年3月終了予定であったが, data cleaning過程で想定外の重複悪性リンパ腫49例が判明し, まずその貴重リンパ腫の疫学特性を解析後にデータセットを再構築したため研究遂行に遅れが生じ, 研究期間を1年延長して本来の原爆被爆との関連を調べた. 県全体の悪性リンパ腫8758例(男4663; 女4095; M/F比=1.14)中, 982 (11.2%)が原爆被爆者であり(M/F比, 0.86), 7776例(88.8%)が非被爆者であった(M/F比, 1.18). 両群とも診断時年齢の中央値は73.1歳で年齢分布に差はなかったが, M/F比が有意に異なっていた(P<0.0001). 2010年時点の長崎県の65歳以上のM/F比は0.66, 2010年時点の原爆被爆生存者集団のM/F比は0.61と女性の割合が多い母集団であることを考慮すると, 男性被爆者に悪性リンパ腫の発症割合が多い事が判明した。このことは, 2013年の放射線影響研究所のLSS集団で男性被爆者のみに線量依存的なnon-Hodkingリンパ腫の発症増加が認められた結果と近似する. Cell-lineage分布は, 被爆群ではB 細胞リンパ腫が, 非被爆群では T 細胞リンパ腫が有意に多かった(P<0.0001). 診断時年齢とB/T細胞比は両群で差がなかった. 全症例のB-cell maturity分布はB2が84.8%, B3が14.4%であり性差を認めたが (P<0.0001), 被爆・非被爆群では差がなかった. T-cell maturity分布は被爆・非被爆群ともにT2 が99%以上を占め両群で差はなかった.
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