研究課題
今年度、心電計同期撮影によってデータの精度向上がどの程度得られたかについて、ベルギーの Staessen教授等のグループと共同で検証した。その結果、撮影された眼底写真から測定された眼底動静脈血管径は、撮影時の心電計との同期の有無によって事前に予想したほどの精度の差を認めなかった。この理由として、心臓から眼底動静脈に至るまでの所要時間が長く誤差が大きくなったこと、眼底内で血管径測定部位までの距離にバラツキがあることなどが考えられ、結果の詳細を学術誌に報告した (Wei FF, Asayama K, et al. Hypertens Res 2016; 886)。本検討を受けて、年度の後半で新しいアイディアに基づいた生体信号同期システムの検討を行い、専門家のアドバイスを受けて特許化ならびに試作機の製作に取り組んだ。年度の終盤に試作機を研究グループで検証した後、一般地域住民を対象に家庭血圧などの測定を 30年近く継続している「大迫コホート研究」(岩手県花巻市)での検診用眼底撮影システムに組み込んで、対象を一旦研究者自身とする形での動作確認を行った。その結果、既存の眼底撮影システムとの信号の送受信が不十分・不安定であることなどの技術的問題点が判明し、次年度の開発継続へ向けた準備を整えることができた。また、今年度は被験者における測定を実施できなかったが、試作機の開発に帝京大学視能矯正学科の協力を得ており、次年度は同学科で同意取得した学生・スタッフにおける撮影を予定し、研究計画の練り込みを行った。
2: おおむね順調に進展している
実勢概要に述べたように、心電図信号との同期は精度向上に強くは結びつかなかった。そのため、今年度は当初予定していた被験者からのデータ収集を行うことができなかった。しかし、新方式の生体信号同期システムを立案し、試作機の完成をみることができた。
今後、新しい生体信号同期システムの開発に取り組み、早期の動作試験、被験者における測定データの収集・解析を通じた実地応用への展開を目指す。
年度終了の直前に物品の購入手続きを行ったが、欠品のため実際の納品が年度内に間に合わなかった。
次年度早期に購入手続きを完了する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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