研究実績の概要 |
目的:体温は日常生活において、血圧と同様に自分で簡便に測定できるバイタルサインの重要なマーカーであるが、体温の追跡研究がみられない。そこで、都市部地域住民を対象に体温とメタボリックシンドローム(MetS)罹病との関係、死因との関係を検討し、健康増進に寄与することを目的とする。 方法:平成元年に性年齢階層別無作為抽出され、健診を受診され2年毎に健診を行っている。今回の研究は、2002年~2003年度にかけて健診受診し研究用の採血に同意された3,650名を対象とした。受診者には両側の表在体温(腋窩)と深部体温(耳鼓膜部)を測定し、それぞれ両側の平均値を用い、表在体温と深部体温レベル別によるMetS罹病リスク、さらに原死因別のリスクについて多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。 結果:34,646人年の追跡結果506名の原死因が確認された(平均14.6年追跡)。男性の腋窩体温第1四分位を基準に、男性の第3,4四分位の全死亡ハザード比(HR,95%信頼区間)はそれぞれ1.5 (1.1-2.0), 1.6 (1.2-2.2)で、虚血性心疾患(CHD)死亡HRはそれぞれ3.1 (1.2-7.7), 2.7 (0.9-7.9)であった。一方、男性の耳体温第1四分位を基準に、男性の第2,3,4四分位の全死亡HRはそれぞれ1.4 (1.0-2.0), 1.5 (1.1-2.1), 1.7 (1.2-2.3)で、CHD死亡HRはそれぞれ4.2 (1.1-15.4), 4.9 (1.4-17.4), 5.7 (1.5-20.4)で、男性の第4四分位の循環器病死亡HRは2.5 (1.2-5.0)であった。しかし、女性では関連性はなかった。また、Mets構成因子の罹患リスクと体温との関連性も見られなかった。 今後、循環器発症との関係、炎症マーカとの関係、頸動脈硬化症との関係について検討する。
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