研究課題/領域番号 |
16K15366
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
斎藤 健 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (40153811)
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研究分担者 |
細川 敏幸 北海道大学, 高等教育推進機構, 教授 (00157025)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポリフェノール / 必須微量元素 / アポトーシス / 活性酸素代謝 / 銅 / クルクミン / レスベラトロール |
研究実績の概要 |
超高齢社会となった我が国にとって、認知症の進行を制御し、予防法を開発することは、高齢者が安心して暮らせる豊かな社会を実現するために極めて緊急性の高い研究課題である。必須微量元素は、中枢神経系において中枢神経伝達強度の調節や脳機能の根幹をなす学習・記憶などの機能発現・制御に重要な役割を演じている。一方、ポリフェノールは、生体内で抗酸化作用等の生理活性を有し、アルツハイマー病等の神経変性疾患や老化に伴う脳機能低下に対して防御的な役割を果たすことが知られている。本研究では、必須微量金属とポリフェノールとの相互作用による中枢神経への影響とその機構を明らかにし、これを応用して、老化および神経変性疾患に伴う脳機能低下の制御法、予防法の開発を図ることを目的とした。 これまでの研究から、ポリフェノールが神経細胞保護作用を示すとともに、神経細胞死を誘導することが示唆されている。しかし、どの様な状況下において、これらが引き起こされるのかについては不明な点が多い。本年度は、我々はその機構に活性酸素とその代謝酵素が関与している可能性について、神経細胞のモデル細胞であるPC12細胞を用いて、未分化と分化後のPC12細胞に対する活性酸素負荷及びポリフェノールのひとつであるレスベラトロール(RSV)の添加の影響について、細胞死及び活性酸素代謝酵素の変動を指標として検討を行った。 その結果、UV照射による活性酸素暴露による細胞死の誘導は、RSV添加により、未分化PC12細胞では増加し、分化PC12細胞では抑制されることが明らかになった。さらに、そのメカニズムを検討し、RSV添加により未分化PC12細胞では、ミトコンドリアにおいて活性酸素除去に働くマンガンが必須なSOD(Mn-SOD)が有意に低下すること、一方、分化PC12細胞では、逆にMn-SODが有意に増加することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリフェノールや微量元素の神経細胞に対する影響を考える時、神経細胞保護効果と細胞死誘導の両面のメカニズムを明らかにすることが必須である。今年度の研究で、レスベラトトールが未分化と分化細胞で相反する作用を示すこと、その作用に銅、鉄、セレンなど、必須微量元素が活性中心として働く活性酸素代謝酵素の発現の違いが関係することが明らかにすることができた。さらに、そのメカニズムを明らかにするためのIn vitro, In vivoの研究に着手した。このように本研究は当初目的に沿ってほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞のモデル細胞であるPC12細胞において、レスベラトロールの添加は、未分化PC12細胞では活性酸素代謝酵素であるMn-SODの低下、分化PC12細胞では増加を誘導することが明らかになった。今後これらの違いを起こすメカニズムについて、転写因子の変動などの検討から明らかにする研究を進める予定ですでに予備実験を終了した。さらに、アルツハイマー病等の神経変性疾患や老化に伴う神経細胞死に活性酸素および活性酸素代謝酵素系がどのように関わっているかを、老化促進モデルマウスなど実験動物を用いて明らかにしてく予定である。
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