研究実績の概要 |
神経細胞のモデル細胞であるPC12細胞を用いて、微量元素の中でも毒性の高いヒ素,カドミウムおよび鉛の曝露に対する抗酸化物質であるαリポ酸の毒性緩和効果を調べた。αリポ酸は,PC12細胞におけるヒ素,カドミウムおよび鉛単独曝露に比べてαリポ酸と-金属/ ジヒドロリポ酸と金属の複合曝露で有意な細胞生残率上昇が確認された。αリポ酸は250μMの濃度で毒性緩和効果を示したが,ジヒドロリポ酸は50μMで同様の効果を示した.GSHレベルとNrf2タンパク質が,それぞれ金属単独曝露では有意な低下を示していたが,共曝露群では有意な増加が認められた。
老化促進マウス(SAMP8)を用いて、運動負荷や機能性食品の摂取が生体内微量金属の動態や老化抑制に効果があるかどうかを検討した。運動負荷後、コントロールのSAMR1運動なし群に比較して、SAMR1運動なし群,SAMP8運動なし群およびSAMP8運動あり群の肝臓中鉄濃度は、有意な高値を示した。さらに、コントロールのSAMR1運動なし群に比較して、SAMR1運動あり群の酸化ストレスマーカーであるp62は有意な高値を示した。ストレスマーカーのHO-1も同様な有意な高値をを示した。
脂質や糖代謝異常が生体内金属動態に及ぼす影響を調べるために、母親を高脂肪食で飼育し、離乳後の雄性仔ラットを成人するまで高脂肪食で飼育した群と、通常の飼料で飼育したコントロール群の肝臓中との脂質代謝および金属動態を検討した。高脂肪食で飼育した群では、肝臓中の脂肪酸合成は抑えられ、脂肪代謝に異常が認められた。これらの子ラットの肝臓中の必須微量元素を測定した。その結果、鉄濃度が有意に増加していることが明らかになった。これらのことから、脂質代謝異常は、活性酸素の発生を増強させ肝臓の機能障害を誘発することが知られているが、鉄の蓄積が活性酸素発生機構に関与していることが示唆された。
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