研究課題/領域番号 |
16K15368
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
床次 眞司 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (80247254)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内部被ばく / 吸入摂取 / 健康影響 / 放射性微粒子 |
研究実績の概要 |
大気中に浮遊している天然放射性物質のラドン(Rn-222)は、タバコの喫煙に次いで公衆の肺がんの要因として世界で認識されている。実際の被ばくの原因はラドンが放射性壊変した後のラドン子孫核種であり、生成直後はナノメートル(nm)サイズの超微粒子となる。それらは高い拡散速度を有しているため物質表面に沈着してしまう。大気中に浮遊しているエアロゾルに付着すると様々な大きさを持つ放射性エアロゾルとなる。これらの粒子は呼吸によって体内に取り込まれその大きさに応じて様々な部位に付着し、その結果気道内表面に付着した子孫核種から放出されるα線が直接細胞に照射される。粒径の違いがその被ばく線量に大きく依存することから本研究では外気環境での粒径サイズが体内環境でどのように変質するかを物理的に捉えることが目的である。昨年度においては放射性エアロゾルを安定的に製造するシステムの開発を進めて、放射線源としてラドンの同位体であるトロン(Rn-220)を採用した。今年度は単一線源で10倍の放射能レベルを自在に設定できる技術を確立することができた。さらにエアロゾルに関しては安全性を考慮してNaCl溶液を噴霧させ、100nm程度の多分散エアロゾルを生成させた。その後、ステンレス製容器内において放射性希ガスとエアロゾルを混合させ、放射性エアロゾルが生成されたことを確認した。また、昨年度来から進めてきた特定粒子径エアロゾルの製造は成功したので、他のサイズについては次年度の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
トロンについては放射能レベルを自在に設定して安定的なばく露環境を構築できた。さらにラドンについても同様なばく露環境を整備でき、NaClを用いた微粒子を用いた放射性エアロゾルを安全に製造することができた。一部特許に絡む技術もあり、他に類を見ない技術としてJSTを支援を得ながら国際特許の出願を完了した。
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今後の研究の推進方策 |
ラドン子孫核種の吸入による被ばくの定量的評価となる「線量」に関して、未だに大きな 不確かさが存在する。本研究の主題である、ラドン子孫核種が付着したエアロゾルが呼吸により体内に取り込まれた際、一般大気中から体内環境(37°C、100%)への移行によりエアロゾルがどのような性状に変化し、それによって沈着部位がどのように変化するのか、すなわち「放射性エアロゾルの変質」を明らかにすることが重要である。現在、安定的な放射性微粒子の製造がほぼ完成したので、引き続き特定の粒径を有する放射性微粒子を用いた実験系を確立させて、吸入摂取による内部被ばくのメカニズムを解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に使用した結果、使用額に残額が生じたため次年度に有効に活用する。
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