研究実績の概要 |
本研究ではまず初年度に、拠点となるフィリピン熱帯医学研究所(Research Institute for Tropical Medicine, RITM)における倫理委員会への変更申請を行い、次年度に変更承認が得られた。承認後は対象とする中部ルソン地方の地方動物衛生保健所において本研究に関する打ち合わせを数回行った。さらに、中部ルソン地方内の州レベル、市レベルの自治体で狂犬病対策を行っている獣医師らを招集しミーティングを行い、現状の共有を行うと共に、本研究に必要な情報提供の依頼を行った。過去10年間の年間狂犬病動物報告数、ヒト狂犬病報告数、動物用狂犬病ワクチン接種数、登録イヌ頭数などについての疫学情報を収集できた州または市において、さらにその中から町レベルで同様の情報を得られそうな都市を選び情報収集中である。また、中央ルソン地域地方動物衛生保健所において収集、検査された動物狂犬病陽性検体の収集も開始しており、RITMにおいて保存している。今後RT-PCRおよびシーケンスにより遺伝子情報を得る。 なお我々はこれまでにも地理的情報を用い、景観遺伝学の手法でフィリピンにおける狂犬病の伝播の促進・抑制要素について中央ルソン地域におけるデータをもとに検討を行ってきた。今回、地理的勾配・人口密度・狂犬病対策活動(予算、および教育活動)のいずれが狂犬病ウイルスの伝播に関与しているかについて検討を行った結果、急勾配の坂のみが狂犬病ウイルスの抑制に関与していることを見出し、その知見について論文を投稿したがまだアクセプトまで至っていない。
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