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2016 年度 実施状況報告書

同定したPM2.5中タンパク質(PM蛋白1、PM蛋白2)の生体作用

研究課題

研究課題/領域番号 16K15373
研究機関岡山大学

研究代表者

荻野 景規  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70204104)

研究分担者 長岡 憲次郎  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (40752374)
江口 依里  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60635118)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードPM2.5 / 重金属 / サイクロンPM2.5 / TSLP / PM蛋白1
研究実績の概要

サイクロン型及びアンダーソン型集塵機から集めたPM2.5には喘息誘発作用がある。しかしながら、これら集塵機により採取されたPM2.5には、粒径の違いがあり、アンダーソン型集塵系からのPM2.5粒子は、0.1μm以下の粒子も多く含有するのに対して、サイクロン型は0.1μm以下の粒子は殆ど存在しない。そこで、サイクロン型PM2.5とアンダーソン型PM2.5による喘息発症実験を比較した。サイクロン型PM2.5を強酸と高温で処理すると、無機炭素やケイ素は不溶で残り、その他の金属は溶出した。処理したPM2.5と非処理のPM2.5をマウスに投与したところ、処理したPM2.5では、喘息の発症を抑制することを認めた。また、サイクロン型PM2.5による喘息発症には、地域性があり、岡山に比し、川崎のPM2.5でより喘息発症効果が認められた。
サイクロン型PM2.5を、ヒト気管支上皮細胞に暴露し、50 μg/mL、100 μg/mL、200 μg/mLと用量依存性に細胞毒性が増加し、同時に樹状細胞にTh2型免疫応答を誘導させるthymic stromal lymphopoietin (TSLP) mRNAを用量依存的に発現させることが判明し、サイクロンPM2.5にアレルゲン作用があることが示唆され、動物実験データと一致した。
我々は、PM2.5中の喘息発症に関与する可能性のあるタンパク質を既に同定し、PM蛋白1及びPM蛋白2と仮称した。PM蛋白1に蛍光発色する試薬を付け、PM蛋白1によるPM2.5の細胞内移行を検討し、PM2.5がOM蛋白1と一緒に、ヒト気管支上皮細胞に取り込まれることを証明した。た。また、PM蛋白1受容体が知られており、その受容体遺伝子を挿入し、受容体の発現を増強することにより、細胞内移行を検討している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

PM2.5による喘息発症に関与するPM2.5中に含まれるタンパク質を同定し、PM蛋白1及びPM蛋白2と命名し、PM蛋白1がPM2.5による喘息発症に関与しているかを検討することを研究目的としている。PM2.5にはアンダーソン型集塵機によるものとサイクロン型集塵機によるものがあり、どちらのPM2.5にもマウスでの喘息誘発作用がある。しかしながら、サイクロン型PM2.5は、タンパク質より重金属の関与が高いことが判明している。そこで、アンダーソン型PM2.5による喘息におけるPM蛋白1の関与を詳細に検討する為の動物実験を行う予定であったが、研究分担者の一人が海外留学で離職したため、動物実験が遅れている。さらに、培養細胞を用いたPM2.5の細胞内移行におけるPM蛋白1の関与の実験も遅れている。

今後の研究の推進方策

新しいスタッフ及び入学予定の大学院生で、マウスを用いたアンダーソン型集塵機又はサイクロン型集塵機で収集されたPM2.5による喘息発症実験を行いPM2.5量と喘息発症との関連性を検討し、PM2.5による喘息発症におけるPM蛋白1の影響を、添加実験及びPM蛋白1に対する抗体での抑制実験を検討し、さらにヒト気管支上皮細胞への暴露によるTH2サイトカイン誘導因子であるTSLP の発現におけるPM蛋白1の関与を検討する。

次年度使用額が生じた理由

研究分担者の一人が海外留学で離職したことと、新規に任用された研究分担者の動物実験及び培養細胞を用いたPM2.5の細胞内移行におけるPM蛋白1の関与の実験への取り組みが遅れたため、十分な実験の実施が出来なかった。

次年度使用額の使用計画

アンダーソン型PM2.5による喘息におけるPM蛋白1の関与及びPM2.5の細胞内移行におけるPM蛋白1の関与の動物実験及び培養細胞を用いて行う予定である。新規に任用された研究分担者により、PM蛋白1の受容体の発現を気管支上皮細胞で、遺伝子レベルで調節する研究を進めている。この結果によっては、マウスレベルで遺伝子編修技術を用いて、mRNA発現調整をすることより、PM蛋白1の細胞内移行機序を解明する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] PM2.5-induced airway inflammation and hyperresponsiveness in NC/Nga mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Ogino K, Nagaoka K, Okuda T, Oka A, Kubo M, Eguchi E, Fujikura Y
    • 雑誌名

      Environ Toxicol.

      巻: 32 ページ: 1047-1054

    • DOI

      10.1002/tox.22303

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 本邦初のPM2.5による喘息実験の成功とそのメカニズム-PM2.5組成との関連性.2017

    • 著者名/発表者名
      長岡憲次郎, 荻野景規, 伊藤達男
    • 学会等名
      第87回日本衛生学会学術集会 シンポジウム6
    • 発表場所
      フェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎市)
    • 年月日
      2017-03-27
  • [学会発表] ヒトラクトフェリンはNC/Ngaマウスにおける喘息様症状を誘導する2016

    • 著者名/発表者名
      長岡憲次郎, 久保正幸, 江口依里, 藤倉義久, 荻野景規
    • 学会等名
      第14回日本予防医学会学術総会
    • 発表場所
      日本科学未来館(東京)
    • 年月日
      2016-06-18
  • [学会発表] PM2.5による喘息の発症~組成による発生機序~.2016

    • 著者名/発表者名
      荻野景規, 長岡憲次郎, 伊藤達男
    • 学会等名
      第86回日本衛生学会学術総会シンポジウム
    • 発表場所
      旭川市民文化会館(北海道 旭川市)
    • 年月日
      2016-05-12

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公開日: 2018-01-16  

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