研究実績の概要 |
2-エチルヘキサノール(2EH)はシックハウス症候群の原因物質と考えられている。これまでに、マウスに2EHを3ヶ月間曝露した場合、2EH濃度依存的に嗅上皮と嗅球の変性がみられることを明らかにしていた。2EHの低濃度長期吸入曝露が嗅覚過敏症状と嗅覚刺激を介した抑うつ症状を引き起こすと仮説を立て、2EHの曝露実験を開始した。 まず初めに、2EHの低濃度曝露の検討を行い、0.6 ppm程度であれば、安定して曝露を行えることを確認した。その後、2EH 新鮮空気(対照群)、0.6 ppm(低濃度)、10 ppm(中濃度)、100 ppm(高濃度)の長期曝露を開始した。チャンバー内の曝露濃度は活性炭チューブでアクティブサンプリングを行ったのち、二硫化炭素で抽出してガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。低濃度、中濃度、高濃度の各群のこれまでの実測濃度の平均は0.6, 11, 103 ppmであった。これまでに3ヶ月曝露までは終了しており、現在6カ月曝露を行っている。体重増加率は中濃度から濃度依存的に減少していた。中濃度、高濃度群は体重あたりの摂餌量はほとんど変わっていないが、 1匹あたりの摂水量が平均で1 mL/日程低下していた。3ヶ月曝露後の嗅上皮の検体は、ヘマトキシリン・エオジン染色を行って鏡検中であり、今後詳細な検討を行う予定であるが、低濃度群は対照群との間に明らかな形態変化は見られなかった。
|