研究課題
我々は最近、マウスに紫外線を照射することによって皮膚の制御性T細胞が著しく増加するという現象を見いだした。制御性T細胞とは、CD4陽性Foxp3陽性の細胞集団で、過剰な免疫応答を抑制し、免疫系の恒常性を維持する働きを持ち、自己免疫疾患やアレルギーを制御する上で重要な役割を担っている細胞である。紫外線照射は、乾癬やアトピー性皮膚炎の患者に照射すると症状が軽快するため、皮膚科領域では治療法の一つとして用いられている。即ち我々が見いだした、「紫外線が制御性T細胞を誘導する」という現象は、紫外線という環境要因が免疫系を大きく制御する可能性を示唆する結果である。紫外線照射によって制御性T細胞が皮膚で増えるメカニズムを解明するため、本年度は制御性T細胞の誘導に必要な樹状細胞のサブセットを同定した(J Immunol 2018 200 (1) 119-129)。これまで皮膚免疫に重要であると考えられていたのは、主として表皮に存在するCD11b陽性 Langerin陽性樹状細胞(ランゲルハンス細胞)であった。しかし今回、紫外線によって皮膚で増える制御性T細胞の誘導には、真皮に存在するCD11b陽性Langerin陰性樹状細胞が重要であることがわかった。また、このCD11b陽性Langerin陰性樹状細胞をRNA-seq解析した結果、ランゲルハンス細胞と比較して、免疫寛容や制御性T細胞の機能と増殖に関わる遺伝子が高発現していた。一方で近年、乳幼児期におかれた環境要因と免疫系の発達が密接に結びついていることが示唆されている。これらの事から我々は、乳幼児期の紫外線への暴露が、制御性T細胞の分化増殖を誘導することで、免疫系を制御する能力の獲得に寄与するのではないかと考えた。現在、乳幼児期のマウスに紫外線照射をした際の影響について解析を進めている。
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The Journal of Immunology
巻: 200 ページ: 119~129
10.4049/jimmunol.1701056
http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/immunol.dir/index.html