研究課題/領域番号 |
16K15381
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
清野 正子 北里大学, 薬学部, 教授 (30239842)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 環境毒性学 / メチル水銀 |
研究実績の概要 |
本研究の背景として、オレアナン系サポニン化合物の一つであるオレアノール酸3-グルコシド(OA3Glu)とメチル水銀の併用経口投与実験(in vivo)により、マウス脳・肝臓・腎臓の水銀濃度がOA3Glu併用投与で減少したことから、OA3Gluがメチル水銀の解毒薬となる可能性を支持する知見を得ていた。本研究では、新奇メチル水銀選択的阻害剤であるOA3Gluを用いた細胞障害性分子標的の同定を指向し、メチル水銀の細胞障害作用に対する機能解析を目的とした。H28年度は、Caco-2細胞によるメチル水銀に対する細胞毒性評価系を用いて、メチル水銀濃度依存的な細胞死がOA3Gluにより抑制されることを明らかにした。続いて、siRNAライブラリーの解析に先行して、膜トランスポーターであるlarge amino acid transporter (LAT)のメチル水銀の取り込みに対するOA3Gluの影響を検討する目的で、内在性のLAT1及びLAT2をsiRNAによりノックダウンさせ、放射標識したメチル水銀の細胞内取り込みを評価した。さらに、これらの解析に加え、メチル水銀ばく露依存的なユビキチン化タンパク質の蓄積を見出すとともに、メチル水銀ばく露特異的に発現が増加する標的分子を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、メチル水銀選択的阻害剤OA3Gluの標的分子の探索、標的分子の安定発現細胞株の樹立、およびそれら細胞株を用いた機能解析を遂行するものである。H28年度は、メチル水銀の取り込みに寄与しているLAT分子に注目した変動分子の解析をした結果、メチル水銀ばく露に応じて発現が上昇する標的分子を同定した。さらに、標的分子の安定発現細胞の樹立の着手に至っていることから、現在の進捗状況について、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、メチル水銀選択的阻害剤OA3Gluの標的分子の探索を継続して行い、随時、標的分子の安定発現細胞株の樹立、およびそれら細胞株を用いた機能解析を実施する。先行して着手している安定発現細胞株については、細胞株の樹立後、メチル水銀に対する感受性、及び、メチル水銀の細胞障害性に対するOA3Gluの影響について解析を進める。さらに遺伝子ノックダウン法を併せて行い、メチル水銀の細胞障害作用に対する機能解析を進める予定である。
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