研究実績の概要 |
本研究は、メチル水銀(MeHg)に対する膜トランスポーターの役割及び、オレアナン系サポニンの一つであるオレアノール酸3-グルコシド(OA3Glu)の抗MeHg作用の分子標的を明らかにすることを目的とし、以下の成果を得た。 我々は、(1)ヒト神経芽細胞株であるSH-SY5Yにメチル水銀(MeHg)をばく露すると、膜トランスポーターであるlarge amino acid transporter (LAT1, 2)の発現が誘導されること、(2)OA3Gluは抗MeHg作用を示す一方で、MeHgばく露によりLAT1の発現が強く誘導されること、(3)OA3GluとMeHgの同時ばく露により相乗的にLAT1の発現が増強することを見出した。 OA3Gluの類似化合物であるhederin(オレアノール酸の3位に糖鎖が2つ結合)処理ではLAT1の発現誘導が認められず、抗MeHg作用も示さなかったことから、OA3Gluのオレアノール酸の3位に単糖が結合していることが抗メチル水銀活性発現に必須であることが考えられた。 これらの研究成果は、OA3Gluの分子標的の解明と低濃度MeHgの解毒薬・予防薬の展開のための分子基盤になると考えている。
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