研究実績の概要 |
調査対象者は2004年から2009年に中国広東省職業病防治院にトリクロロエチレン(TCE)による過敏症症候群(Hypersensitivity syndrome, HS)で入院した患者69名(男性45名、女性24名)、性と年齢を1:1でマッチさせたTCEHS耐性対照者とTCE非曝露対照者それぞれ69名であった。前年度研究ではTCE非曝露対照群の数が揃わなかったが、今年度の研究ですべてサンプルが揃い、血清CYP2E1抗体の測定が終了した。TCEHS患者は入院時に、TCEHS対照者は作業終了時にそれぞれ採血と採尿をした。TCE非曝露労働者は検診時に採血した。血液は血清に分離後-80℃で、尿は-30℃で保存した。CYP2E1抗体は我々の開発した方法で測定した。全体では、3群の間にはCYP2E1抗体レベルに有意差がみられ、TCEHS耐性対照群>TCEHS患者群>TCE非曝露対照群の順であった。男性では、同様に3群間に有意差がみられ、TCEHS耐性対照群>TCEHS患者群>TCE非曝露対照群の順であった。女性では、TCEHS耐性対照群>TCEHS患者群=TCE非曝露対照群であり、TCEHS患者群とTCE非曝露対照群の間に有意差を認めなかった。TCE曝露から離れると、女性TCEHS患者群のCYP2E1抗体のTCE作業終了日からの日数が長い程低いが、この理由は不明であった。TCEHS耐性対照群において、尿中TCE代謝物のトリクロロ酢酸濃度と血清CYP2E1抗体値の間に関連性は認められなかった。上のごとくTCE曝露によりCYP2E1抗体が上昇するが、これには性差が認められ、女性>男性であった。TCEHS患者の皮膚の病型とCYP2E1抗体レベルの間には関係性は認められなかった。以上の結果はTCE曝露が血清CYP2E1抗体レベルを上昇させることを示し、これが肝炎を引き起こしHypersensitivityの原因となるかもしれない。
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