研究実績の概要 |
現代社会において、肥満やメタボリックシンドロームは世界的な健康問題である。欧米に比べ高度肥満者が少ない我が国においても、インスリン分泌能の低い遺伝子をもつ日本人には糖尿病罹患のリスクが高い。 肥満をはじめとする生活習慣病は、腸内細菌叢が関連していることが分かっている。そして、その腸内細菌叢には食事や抗生剤、運動習慣などの生活習慣が影響していると言われている。一方で、双生児を対象とした先行研究により、一卵性双生児間の類似性は、非双生児間の類似性よりも高く、遺伝の影響を示唆されることも分かっている。罹患しやすさなどの表現型には遺伝と環境の両方の影響があり、どの程度影響しているのか、また環境のどのような要因が強いかを明かにするためには、同じ遺伝背景をもつ双生児を対象にした双生児研究法が有用である。 本研究は、日本人の遺伝的・環境的要因を考慮するために、成人双生児の腸内細菌叢に着目し、生活習慣病の予防に有用な環境因子に関する知見を得ることを目的とした。 郵送または対面での調査にて、排便サンプルと調査票の回収を88名の双生児を対象に実施した。本研究対象者は大阪大学ツインリサーチセンターに登録されている健常ボランティアのため、BMIも概ね正常範囲であった。そのため、BMIの低い群に着目し、双生児間の腸内細菌叢の類似度を検討したところ、BMIが共通して低値の双生児間でも腸内細菌叢の構成が一致するペアと、構成がかなり違うペアがあることを確認し報告した(ISTS in Madrid, 2017)。 そこで、本研究と同時期に別研究課題に同意し調査に参加された方については、血液結果も併せて分析をすることを目的に、データクリーニングならびにデータセットの統合を実施している。 また国際共同研究の協議も進めてきたが、比較分析までには至らず、それぞれのチームでのサンプリングを進めた上で今後検討することとなった。
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