亜ヒ酸の曝露に伴うPMLタンパクの不溶化反応、SUMO分子による修飾と細胞内におけるPMLの局在変化を調べるとともに、death-associated protein 6 (Daxx)やmurine double minute 2 (MDM2)などのPML核小体関連タンパク質の細胞内あるいは核内の動態も合わせて調べた。まず、ヒトPML遺伝子、およびヒ素結合部位と推測される領域に変異を導入した遺伝子をほ乳類細胞に導入し、PMLのN端の存在するRINGドメインの有無によるPMLの亜ヒ酸応答性について調べた。PMLとヒ素との結合形態、タンパク修飾、PML核小体にリクルートされるタンパク質をウェスタンブロティング法やプルダウン法、抗体を用いた蛍光免疫染色法を用いて解析したところ、PML核小体内には、少なくとも2つの異なるコンパートメントが存在し、亜ヒ酸により不溶化する分子は、PMLのSUMO化に必要であり、亜ヒ酸応答的に核小体内にリクルートされてくることを明らかにした。PMLと核内で結合することが知られているMDM2をKOした293-MDM2細胞は、HEK293やHEKPML細胞に比べサイズが大きく、細胞増殖速度も有意に低下していた。293-MDM2細胞は、HEK293細胞に比べ亜ヒ酸に対してより耐性であった。293-MDM2細胞では、亜ヒ酸の曝露によりcaspase-3/7活性が上昇した。しかし、HEK293や293-MDM2細胞においては、亜ヒ酸の細胞障害性にcaspase inhibitorsの効果が見られなかったことより、ヒ素を曝露したこれらの細胞においてアポトーシス以外の細胞死の機構が考えられる。
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