研究実績の概要 |
既法を改良したメチル水銀分析法を用いて、日本近海で漁獲された生のベニズワイガニ41試料の総水銀およびメチル水銀を測定した。また、ベニズワイガニは、茹でた状態で流通する事例が多い。そこで、様々な海域で多数の試料を収集する目的で茹でたベニズワイガニ39試料の総水銀濃度を測定した。今回の調査により得られたベニズワイガニ中のメチル水銀、水銀濃度は、既報のカニ(blue crabs, edible crab, Chinese mitten crab, red king crab)の濃度と比較すると、特に高いものではないと考えられた。今回調査した生ベニズワイガニ中の総水銀濃度とメチル水銀濃度との関係を検証した結果、ベニズワイガニでは水銀は概ねメチル水銀の形態で蓄積されていることがわかった。この傾向は、他の魚種と同様であった(Sato N.,et al, Residues of total mercury and methyl mercury in eel products. Shokuhin Eiseigaku Zasshi(Food Hyg. Saf. Sci.), 46, 298-303(2005))。また、体重と総水銀及びメチル水銀の濃度に相関が認められた。このことから、海洋の中深層に生息し、寿命の長いべニズワイガニは、生息域の食物等から取り込んだメチル水銀を経年的に体内に蓄積していくという推測が正しいことが示唆された。 また、魚類(タイ、サバ、ブリ)についてメチル水銀分析法の性能をみたところ、「食品中の金属に関する試験法の妥当性評価ガイドラインについて」第0926001号の目標値(真度80~110%、併行精度<10%、室内精度<15%)を満たし妥当性が確認された。
|