研究課題/領域番号 |
16K15388
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
阿部 智一 筑波大学, 医学医療系, 客員教授 (70633973)
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研究分担者 |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外傷 / ヘルスサービスリサーチ |
研究実績の概要 |
外傷は若年の主な死因であり予後も悪い。しかし、未だ予後を劇的に改善させるものは見つかっていない。申請者らの過去の研究では医療サービスが外傷患者の予後の改善にある程度寄与することが分かっている。つまり、外傷の予後が大きく改善していない理由として医療が本当に必要な時に必要な方法で必要としている人に確かにサービスとして常に届けられていない可能性がある。申請者は施設スタッフの種類と数などの構造、実際に行われた診療の国際標準化や提供時間などのプロセスを曝露因子とし、外傷患者へのサービスの違いによる予後(アウトカム)の違いを明らかにし、外傷診療の質の向上を目指すことを目的とした。初年度はデータ取得とともに既存のJapan Trauma Data Bankのデータを用いて、外傷のヘルスサービスリサーチを行なった。概略を示す。 研究の目的は心停止を起こし得るような重症体幹外傷患者の蘇生処置として、腹部大動脈瘤破裂などの他の分野で出血性ショックに対してすでに有効とされている大動脈内バルーン遮断(REBOA)が古くから用いられている開胸大動脈クランプ術(ACC)の代替となり得るかを2004年~2013年のデータを用いて、後方視的に検討した。対象はREBOAまたはACCにより蘇生処置を受けた903例とした。REBOA群は636例、ACC群は267例だった。院内死亡率は、ACC群90%に対してREBOA群は67%と有意に低かった。それは解剖学的重症度、外傷予測生存率で調整後も同様の傾向を示した。傾向スコアを用いても同様の結果であった。体幹の重症外傷にはREBOAが有効な手段の一つであることが示された。本研究はアメリカ心臓協会)よりBest Oral Abstract Awardsに選ばれた。また、同年中にCritical Careに発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究には日本救急医学会学会多施設共同研究:Focused Outcome Research on Emergency Care for ARDS, Sepsis and Trauma(JAAM FORECAST)(http://www.jaam.jp/html/jaamforecast/index.html)のデータを用いる。これは重症外傷患者を対象とした前向き登録方式(レジストリ)である。平成28年度は申請者ら企画委員による定期的なデータの獲得状況の確認をし、データ整理・中間解析、フィードバックを行なった。そして、平成29年3月末にデータ取得が終了した。すでに必要な症例数は取得できている。現在、欠損データの確認中である。欠損データに関しては今後、各施設に連絡をし、データベースの精度を上げていく予定である。 また、申請者は他のデータを用いて、同様の外傷のヘルスサービスリサーチを行い、すでに国際学会で優秀賞を受賞し、同分野のトップジャーナルの一つに論文発表行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は2年かけて主にデータの整理と解析を行い、国内、国際学会で発表後、論文化する。それらが査読により学術的評価を得た後、救急診療でのガイドライン化を目指す。国民には分かりやすい形に改変し、ホームページ等で公開する。また、得られた結果を欧米のように各施設へフィードバックし、各施設の診療の質の向上にも役立てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ビックデータ整理を年度をまたいで行なっているため、まだ、整理が終わっていない部分で未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ビックデータ整理のための人件費、ソフトウェア代に用いる予定である。
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