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2017 年度 実施状況報告書

焼却滅菌に着眼した新発想空気清浄化装置による病院環境のリスクマネジメント

研究課題

研究課題/領域番号 16K15391
研究機関福井大学

研究代表者

岩崎 博道  福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 教授 (10242588)

研究分担者 稲井 邦博  福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30313745)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードリスクマネジメント / 感染予防
研究実績の概要

近年、CTを活用した死後の画像検査(autopsy imaging: Ai)が多く利用される時代を迎えた。医療事故に対する社会的な関心の高まりを背景に死亡時の情報開示が求められ、Aiは院内死亡のみならず広く遺体の死因救命に活用される状況となっている。院外遺体は搬送されるまでに置かれた環境によって著しく変化していることがあり、その影響を受けて撮影に使用するCT検査室内の環境が病院設置基準から大きく逸脱する可能性もある。しかし、遺体のCT撮影時のCT検査室の環境リスク管理に対する配慮がなされてはいないのが現状である。このCT室を将来に応用を計画している院内病室の疑似モデルとして新型の焼却滅菌型空気清浄化装置の病院環境の感染対策リスクマネージメントに果たす有効性の評価を進めている。
AiセンターのCT検査室において、焼却滅菌型空気清浄化装置を使用し、解剖作業が終了した段階で室内から分離される微生物についてその変化を検証した。焼却滅菌型空気清浄化装置を使用せず観察した前年度に得たデータをコントロールとした。焼却滅菌型空気清浄化装置導入前後で分離された菌種数(細菌または真菌)が4.5±1.3種(1~8種、中央値4)から、4.1±0.8種(3~6種、中央値4)と有意に減少した。真菌に限定すると、空中に浮遊する真菌(主に糸状菌)胞子のコロニーが同定された症例数は22/86症例(25.6%)から1/41症例(2.4%)と顕著な減少を示した。細菌において空中浮遊菌のコロニー数は、焼却滅菌型空気清浄化装置導入前後で1,000Lの空気中から分離されたコロニー数が、85±101 CFU(3~658、中央値59)から、32±28 CFU(4~162、中央値28)と有意に減少した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

焼却滅菌型空気清浄化装置を稼働する前の状態(コントロール)として初年度、通年的に様々な条件を調査した。そのデータと比較するかたちで本年度は焼却滅菌型空気清浄化装置を稼働させた状況下において、空気中に存在する微生物のコロニー数を定量的に評価し、本研究に使用している新しい焼却滅菌型空気清浄化装置の有用性を評価した。その結果より、検出された微生物の菌種数が有意に減少したことが示された。さらに真菌および細菌の分離コロニー数も有意に減少していることが確認された。焼却滅菌型空気清浄化装置の病院環境における感染対策リスクマネージメントに果たす性能評価としては現在まで、将来の実用に耐えるほぼ予想通りの結果を得ている。

今後の研究の推進方策

においの発生に関しては、調査対象としている遺体の属性(病理解剖および法医解剖)により大きな差異があることが昨年より観察されており、この点については次年度に、においセンサーを用いて確認していく予定である。さらに院内の病理解剖が実施された死亡例については、死因に感染症が直接関与している例や、死因には関与していないとしても感染症を合併している事例が多い。この様な症例において剖検時に菌血症の有無を評価することにより、そのことが環境汚染にどの程度関与するのか評価することも並行して行いたい。剖検時に患者からの採血を用い、血液培養を実施することにより菌血症の有無を確認するとともに、血中の各種サイトカイン濃度についても定量する予定である。死亡患者の菌血症(敗血症)の重症度も加味して、剖検室環境に与える汚染の程度に検討を加える予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究では環境中の微生物の生息状況を確認することにより、新しい焼却滅菌型空気清浄化装置の有用性を評価している。上記に示すように、その成果は確認できつつあるが、院内の環境汚染に患者の感染症の状況も関与している可能性が新たに推測された。従って、剖検時に菌血症の有無を評価することにより、そのことが環境汚染にどの程度関与するのかを検討することも並行して行う予定である。剖検時に行われる採血による血中のサイトカイン濃度をELISA法により測定することを計画している。サイトカインとしては、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-12p40 etc)、ケモカイン(IL-8, MIP-1α etc.)、抗炎症性サイトカイン(IL-10)を測定することを計画中である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Human feet bitten by multiple brown dog ticks, Rhipicephalus sanguineus,2017

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi A, Iwasaki H
    • 雑誌名

      ID cases

      巻: 9 ページ: 8

    • DOI

      10.1016/j.idcr.2017.04.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tetanus attacks an old person with inadequate vaccination showing 'Risus Sardonicus' face.2017

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi A, Iwasaki H
    • 雑誌名

      ID cases

      巻: 10 ページ: 38-39

    • DOI

      10.1016/j.idcr.2017.08.009

    • 査読あり
  • [学会発表] 血液内科病棟で発生したアスペルギルス症診断の後方視的検討.2017

    • 著者名/発表者名
      重見博子, 伊藤和広, 田居克規, 山内高弘, 石塚 全, 岩崎博道.
    • 学会等名
      第61回日本医真菌学会総会学術集会.
  • [学会発表] 真菌性髄膜炎の治療.2017

    • 著者名/発表者名
      岩崎博道, 重見博子.
    • 学会等名
      第22回日本神経感染症学会総会学術大会.
    • 招待講演

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公開日: 2018-12-17  

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