研究課題/領域番号 |
16K15392
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
廣瀬 昌博 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (30359806)
|
研究分担者 |
内田 宏美 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (30243083)
岡本 和也 京都大学, 医学研究科, 准教授 (60565018)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | インシデント・アクシデント / 自動検知システムの必要性 / インシデント・キーワード / 医療従事者の意識 / 医療従事者間のギャップ / インシデント発生と報告のタイムラグ |
研究実績の概要 |
われわれの先行研究からインシデントレポートについて、とくに医師はインシデント発生後にレポートの未提出や遅れが指摘されている。病院情報システム上の診療録や看護記録等から、インシデントの報告漏れを防止するため、本研究ではインシデントを自動的に検出する自動検知システムの開発が目的である。 本研究の調査対象は、2015年度の1年間のインシデントレポートで、そのうち一般事例2389件および転倒転落事例594件のレポートが提出されている。さらに、重複事例を除くと586件の転倒転落事例であった。 一方、インシデント発生からレポート提出までにタイムラグがあることから、この期間に医師、看護師等によるインシデント発生の事実確認や情報共有を目的としたカルテ記載がなされるはずである。そこで30年度は転倒転落事例586件のうち、当該期間内にカルテ記載のあった575件について、カルテ記載の総数は6806件であった。インシデント1件あたりの記載数は11.8件、事実確認に関する記載件数は1114件、情報共有に関する記載件数は639件であった。これらを詳細に検討すると、インシデント575件について、医師による報告までの時間は医師1.79日、看護師1.55日でわれわれの先行研究と同等の結果であった。また、事実確認もしくは情報共有に関する記載が少なくとも一つあったのは441件(575件の77%)、事実確認のみが98件(17%)、どちらの記載もないインシデントは36件(6%)であった。 さらに、事実確認のあった1114件のうち、95%がインシデント発生から1日以内に記載され、78.5%が1日以内にレポートとして報告されていた。したがって、転倒転落のインシデント発生の認識があるにもかかわらず、かならずしもすべてが即日中に報告されるとは限らないことが分かった。以上からインシデント自動検知システムの必要性が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本院は、2017年度から2018年度にかけて病院情報システムの更新が実施され、それに伴い、インシデントに関する電子カルテ上の記載について、それらの情報を獲得するのに時間を要した。しかも、電子カルテ記載を調査する医療従事者が一時的に確保できなかったことにより、研究の進捗状況に遅れが生じ、研究期間を1年間延長することとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
上記で示したようにインシデント発生は職種間のcommunication breakdownによることなどから、2018年度島根大学グループは、提出されたインシデントレポートについて、転倒転落のインシデント発生の認識があるにもかかわらず、かならずしもすべてが即日中に報告されるとは限らないことが分かった。このことからインシデント自動検知システムの必要性が確認された。 そこで、2019年度については、一般事例にその対象を拡大し、インシデント発生から報告までの期間に医師や看護師、その他の医療従事者による記録において、インシデント発生について、その認識の有無や医療従事者間でのインシデントに関する情報の共有の有無を人的に確認することとし、インシデント発生に対する医療従事者の意識、認識の相違を示すことでインシデント自動検知システム開発の必要性と重要性を示す予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
島根大学医学部附属病院では、病院情報システムの更新が2017年度~2018年度にかけて行われた関係で、本研究で利用したインシデントレポートに関連する電子カルテの記載内容の抽出が遅れたことにより研究の進捗が遅れるとともに、国内および海外成果発表ができなかったことにより、旅費の一部が残ったものである。本年度は研究を終了させるとともに成果発表を行う予定である。
|