研究実績の概要 |
近年、MALDI-TOF MS法は菌種同定検査以外に薬剤耐性菌の検出やクローン解析に至るまで発展してきた。申請者はこの技術に着目し、ESBL産生菌およびCPE産生菌の確定や薬剤耐性遺伝子の判別について検討した。 1. ESBL産生菌検出に関する研究 ClinPro Toolsでの解析には、CTX-M1 group 7株, CTX-M2 group 1株, CTX-M9 group 21株, TEM-1+CTX M1 group 4株, TEM-1 + CTX M9 group 7株および非ESBL産生菌株50株を対象とした。比較的特異性の高いピークでの識別(9736m/z、2339m/z)や各種アルゴリズムのCross validationおよびRecognition capabilityで検討した結果、ESBL産生菌の検出は困難であった。一方、flexAnalysis にて4170m/z, 4860m/z, 7700m/z, 8320m/z, 9750m/z付近にESBL非産生菌のみに出現するピークが確認されたが、出現頻度はいずれのピークも30%程度であり、ESBL産生菌検出への利用には困難であった。 2. CPE産生菌検出に関する研究 ClinPro toolsでの解析にはIMP型75株、GES 5株、OXA型5株、NDM型5株、KPC型4株、VIM型2株を対象としたが、解析の主体は菌株数の多いIMP型で実施した。その結果、比較的特異性の高いピークでの識別(2832m/z、4154m/z)や各種アルゴリズムではCPE産生菌の検出は困難と考えられた。ただし、申請者が独自開発したIUHW2法では感度82.14%、特異度70%を示し、CPE産生菌の検出に有用であることが示唆された。このIUHW2法による解析については更なる検証が必要と考えている。
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