研究課題/領域番号 |
16K15399
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小湊 慶彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205512)
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研究分担者 |
高橋 遥一郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50640538) [辞退]
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (70455955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / 小児虐待 / 頭部外傷 |
研究実績の概要 |
ストレス状況下において、視床下部-下垂体-副腎システムが恒常性維持のために重要である。この経路に関わるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の増加はこの経路に悪影響を及ぼし、精神的な問題を惹起する。その遺伝子発現はストレス下で一過性に増強され、その後に抑制を受けるが、その抑制に視床下部室傍核の神経細胞のGlucocorticoid receptorが関わっている。自殺者脳を用いた研究では、子供時代に虐待を受けたヒトではGlucocorticoid receptor (NR3C1)遺伝子プロモーターにメチル化の増加が報告されている。以上より、虐待を受けたヒトではGlucocorticoidによる抑制が効かず、CRHが増加した状態が続き、ストレスに対する抵抗性の低下や精神的な問題を生じやすくなるのではないかと推論されている。そこで、虐待死亡事例3例、頭部外傷2例を含むコントロール5例について、解剖時に保存された脳から、大脳皮質、海馬、扁桃体、小脳等のパラフィン包埋切片を作製し、ZEISS社製PALMレーザーマイクロダイセクションシステムを利用し海馬から神経細胞を収集し、EpiTect Bisulfite Kit (QIAGEN社)を用いてDNA抽出とバイサルファイト処理を行い、NR3C1遺伝子プロモーターに対して特異的PCRを行い、クローニング後に塩基配列の決定からメチル化の検索を行った。その結果、頭部外傷例では転写因子NGFI-Aの結合サイトにメチル化の増加が観察されたが、虐待例では特異的なメチル化の増加は観察されなかった。実際、頭部外傷後にメチル化の増加が報告されている。従って、本研究結果からは、虐待によるメチル化の増加は観察されず、頭部外傷後のメチル化の増加が観察された。今後は、1)症例数の増加、2)別の部位におけるメチル化検索、3)別の遺伝子におけるメチル化検索を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)解剖時に保存された脳から、大脳皮質、海馬、扁桃体、小脳等のパラフィン包埋切片を作製し、ZEISS社製PALMレーザーマイクロダイセクションシステムを利用し海馬から神経細胞を収集し、EpiTect Bisulfite Kit (QIAGEN社)を用いてDNA抽出とバイサルファイト処理を行い、NR3C1遺伝子プロモーターに対して特異的PCRを行い、クローニング後に塩基配列の決定からメチル化DNAを特定するプロトコールを確立した。2)虐待死亡事例3例、頭部外傷2例を含むコントロール5例について、海馬の神経細胞におけるGlucocorticoid receptor (NR3C1)遺伝子プロモーター領域のメチル化を調べることができた。3)これらの結果について論文を作成し、雑誌に現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1)症例数の増加、2)大脳皮質、扁桃体、小脳等の異なる部位における神経細胞のNR3C1遺伝子プロモーターに対するメチル化検索、3)NR3C1遺伝子プロモーター以外の領域におけるメチル化検索の検討、等を行う。
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