研究課題/領域番号 |
16K15399
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小湊 慶彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205512)
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研究分担者 |
高橋 遥一郎 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (50640538) [辞退]
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70455955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | こどもの虐待 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
子どもの虐待死亡例4例、コントロールとして子どもの内因死及び事故死4例について、解剖時に保存された脳から大脳皮質、海馬、扁桃体、小脳等についてパラフィン包埋標本を作製した。左右海馬からレーザーマイクロダイセクションシステム(ZEISS社製PALM)を利用して、錐体神経細胞層を選択的に採取した。得られた細胞からQIAamp DNA FFPE Tissue Kit (QIAGEN社)を用いてDNAを抽出した。そのDNAにEpiTect Bisulfite Kit(QIAGEN社)を用いてバイサルファイト処理を施した。Nuclear Receptor Subfamily 3, Group C, Member 1 (NR3C1)遺伝子1Fプロモーターを標的にPCRを行った。PCR産物をクローニングベクターpUC118に組み込み、大腸菌をトランスフォーメーション後、各クローンの塩基配列をBigDye Terminator v1.1 Cycle Sequencing Kitを用いて調べることでメチル化の検索を行った。 コントロール例では調べた領域に関して各アリルにメチル化DNAを0から2箇所を含んでいたが、転写因子NGFI-A認識配列にメチル化DNA1箇所を有するアリルは8アリルであり、他の76アリルにはなかった。一方、急性硬膜下血腫を伴う虐待例では転写因子NGFI-A認識配列にメチル化DNA1箇所を有するアリルは左海馬12アリル中6アリル、びまん性軸索損傷を伴う虐待例では転写因子NGFI-A認識配列にメチル化DNA1乃至2箇所を有するアリルは左海馬12アリル中0アリル、右海馬12アリル中6アリルにDNAメチル化が認められた。しかし、鼻口部圧迫を受けた虐待例の左海馬12アリル、ネグレクトを受けた虐待例の左右海馬24アリルでは転写因子NGFI-A認識配列にメチル化が認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①PCR条件の再検討、②レーザーマイクロダイセクション条件の再検討、③PCRクローニング後の塩基配列決定方法の改善により、研究進捗が改善されたため、研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
以上の結果から、頭部外傷を伴う虐待例ではDNAメチル化が増加しており、海馬の錐体神経細胞でのNR3C1遺伝子の発現が低下しており、視床下部-下垂体-副腎皮質系活動によるストレス抵抗性が減弱していたことが考えられた。また、虐待でもその種類によってDNAメチル化が異なることが推測された。 今後は、①症例数を増やして検討を重ねる、②DNAメチル化の増加が認められた症例については、別の遺伝子に関して、DNAメチル化を検討する、③DNAメチル化の増加が認められた症例については、別の部位のNR3C1遺伝子に関して、DNAメチル化を検討する、予定である。
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