近年、死後画像診断を社会制度として取り入れる動きが活発化している中、新たな医学的情報が蓄積されている。本研究では病院内死亡後に死後画像診断に供されたご遺体の所見と遺伝的多型の関連を探るため、死後画像診断および司法解剖時のデータを用いた特徴とSNPに関する調査を行った。胎生期の成長に関与するHMGA2遺伝子内SNPは、主にコーカシア人で身長との関連が報告されている。手始め的にHMGA2遺伝子内3SNPの日本人身長との関連調査を行ったところ、これらの3SNPのうち、日本人においてrs7968902にのみ身長との有意な関連がみられ、コーカシア人ではrs1047275との間に関連はみられなかった。この結果に端を発して、GHR遺伝子におけるSNP(rs6180)と臓器重量との関連を精査した。GHR遺伝子に存在する非同義置換型SNPのうち、rs6180のみが多型性を有する。同様にrs6180の遺伝子型を判定した。それぞれの解剖例について、身長、心重量、左室重量、心肥大係数、体表面積、左室重量係数、左右肺重量、肝臓重量、左右腎重量、脳重量、虫垂長等を計測しrs6180との相関を検証した。 その結果、心重量、左室重量、心肥大係数、体表面積、右肺重量、左右腎重量との間に優位な相関を示し、CアレルはAアレルに比してこれらの係数を増加させることが明らかとなった。GHR内rs6180と臓器重量や心パラメータ等の計測値との相関が初めて明らかになった。 さらにERAP1の遺伝子多型SNP(rs27434) も同様に精査し、男女共に大脳重量との間に重要な相関を示した。男性では肝臓重量、心肥大係数、体表面積との間にも有意な相関を示し、大脳重量とともにGアレルはAアレルに比してこれらの重量・係数を増加させることが明らかとなった。一方、女性では大脳重量以外では、虫垂長にのみ相関が認められた。
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