研究課題/領域番号 |
16K15404
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
太田 茂 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 教授 (60160503)
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研究分担者 |
奥田 勝博 旭川医科大学, 医学部, 助教 (00389115)
佐能 正剛 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 助教 (00552267)
古武 弥一郎 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 准教授 (20335649)
清水 惠子 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90312462)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 薬毒物 / 毒性 / 心筋細胞 / 神経細胞 / 代謝 |
研究実績の概要 |
薬毒物中毒は、摂取量、摂取日時が不明で、多くは多剤併用であり、さらには生体内の薬物代謝酵素により代謝変換された代謝物の寄与も想定しなけらばならない。その中で、薬毒物の毒性メカニズムの解明し、中毒原因を特定することは、法医診断学上極めて重要である。中毒死の原因となる薬物は、不整脈、心不全、もしくは中枢に作用することによって中毒死に至ケースも多いことから、心臓や脳における毒性評価を行う必要がある。そこで、本研究では、ラットから心筋細胞や神経細胞を単離し、種々の培養形態が可能となる2次元培養、もしくは3次元培養を通して毒性評価系の構築を行った。 心筋細胞は、ラットから単離した新鮮なものを用い、プレート底面にスリットがついた格子が敷き詰められているプレートに播種し培養した。検証化合物には、睡眠改善薬であり、多量摂取による中毒報告が増えてきているジフェンヒドラミンを用いた。ジフェンヒドラミンおよびその各種代謝物の心筋細胞に対する毒性を拍動回数に与える影響を調べたところ、細胞死まではいかないものの、ジフェンヒドラミンとその脱アルキル体代謝物で拍動回数を有意に減少させた。その原因を解明する目的で、ミトンドリア膜電位や活性酸素種産生に与える影響を調べたが、詳細な原因は明らかにはならず、今後の課題となった。 一方、神経細胞もラットから単離した新鮮なものを用い、Hanging drop法を用いて3次元培養を行った。検証化合物には、薬毒物中毒の報告はないものの神経細胞に対する毒性発現の知見が多い、トリブチルスズ(TBT)を用いた。神経細胞とグリア細胞を共培養した3次元培養系にTBT曝露したところ、反応性アストロサイトが誘導されていることが示唆され、新しい毒性メカニズムを考える上で、重要な知見が得られた。 今後、その他の様々な薬物中毒の原因解明をする上でも、これらは有用な評価系となることが期待される。
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