我々は血管壁に障害(アポトーシス)を誘導した際に、アポトーシス誘導細胞で強発現し、放出されるparacrine 増殖因子(GFX)を見出し、GFXが障害後の組織修復(再生)に重要な役割を果たしていることを明らかにした。当該研究の目的は我々が見出したGFXの骨格筋障害後の筋再生への役割を明らかにすることである。骨格筋では加齢、廃用、脱神経など様々な障害によりアポトーシスが誘導されることが知られる。老化などによりその再生能が低下すると、修復遅延、さらにはサルコペニアの要因となり得る。そこで我々はGFXが骨格筋での組織修復に関与し、今後サルコペニアなどへの臨床応用につなげ得るチャレンジングな課題を検討することとした。 マウス(C57BL/6)四肢骨格筋に障害(アポトーシス)を誘導後、血管と同様にGFXが誘導され、組織再生に関連しているかどうかを明らかにし、さらにGFXのシグナル経路を解明することを計画した。 実験はコントロール群とGFX中和抗体群ならびに組み換えGFX群をそれぞれ、組織学的(HE染色、Masson-Trichrome染色、各種免疫蛍光染色)ならびに生化学的(PCR、WesternBlotting、ELISA、FACS)に評価し、比較検討を行った。 結果、GFX中和抗体投与群において障害後筋肉再生の遅延を示す結果が、組み換えGFX投与群ではそれに相反する結果が得られた。それらの結果より、我々がこの研究を開始する動機となった仮説、GFXは障害後の筋肉再生に明らかに関与していることを証明することができた。今回の実験結果は今後の骨格筋再生において大変価値あるものになりうると考えられる。
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