研究課題
マウス慢性拘束モデルの作製と病理解析を行った。マウスに1日2時間の拘束ストレスを反復したところ、1週間では変化は起こらず2週間で内臓脂肪の萎縮と慢性炎症を認めた。ストレスはコルチゾル、エピネフリンの分泌を惹起し、結果脂肪融解をきたす。この結果内臓脂肪由来の遊離脂肪酸の血中濃度が上昇し、TLR4が刺激されて炎症性サイトカインの誘導、炎症細胞浸潤が内臓脂肪に認められた。この結果をもとに2週間の慢性拘束ストレスの影響を、主要臓器について無菌性の慢性炎症に着目して解析した。主要臓器、血漿を摘出して、酸化ストレス、血栓、炎症に関する病理解析と、これらの関連分子、凝固因子の発現の定量を行った。血中脂質の変化、糖負荷・インスリン負荷試験を行って糖代謝も検討した。本検討では特にxanthine oxidoreductase (XOR)に着目した。ストレスは、小腸、肝臓、内臓脂肪においてXORを誘導、活性化し、結果血中尿酸値と酸化ストレスを増加させ、慢性炎症を増悪させた。その結果、組織因子、PAI-1を誘導して血栓傾向を惹起し、内臓脂肪IRS-1 Glut-4の発現を低下させてインスリン感受性を低下させた。XOR阻害薬は、脂肪融解による遊離脂肪酸の増加を抑制し、TRF4の活性化を抑制した。XOR阻害薬は、XORの活性化のみならず、XORの誘導を抑制した。これによって酸化ストレスの産生は抑制されて内臓脂肪の慢性炎症は抑制された。ストレスによる血栓傾向、インスリン抵抗性も改善した。
2: おおむね順調に進展している
研究実績に期した結果を Scientific Reports誌に報告した。引き続きストレスの腸内細菌叢への影響を検討している。
マウスの拘束ストレスによる慢性ストレスモデルについて以下の検討を行う。主要臓器(心臓、大動脈、内臓脂肪、肝臓、骨格筋、血液)の酸化ストレスマーカー、炎症マーカーの相関についてトランスクリプトーム解析を行う。脂肪酸代謝、アミノ酸代謝の変化についてメタボローム解析を行う。
(理由)次年度に予定外の職場の異動があるため、その準備もあり学会出張などが十分できなかった。(使用計画)次年度の物品費に使用する。また、埼玉医大と名古屋大学で研究をするための移動費にも充てる。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Sci Rep.
巻: 7 ページ: 1266
10.1038/s41598-017-01366-3.
Ann Noninvasive Electrocardiol.
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