研究課題
老化は様々な疾患の基盤となっており、老化制御を介した医療開発を行うためには、老化の分子基盤を理解する必要がある。一方でヒトの老化を解明するためには研究モデルを用いる必要があるが、ヒトの正常老化は多様な背景のもとに成立しており研究モデルにはなりにくい。これまでに行われてきた老化研究は、細胞老化を中心としたin vitroの細胞を用いた研究、線虫などの短命の実験生物を用いた研究、遺伝子改変を中心としたモデルマウスを用いた研究、サルなどの大動物を用いた長期間の介入研究、遺伝性老化症候群の遺伝子解析研究、そして老化症候群の患者由来iPS細胞を用いた研究がなされてきた。どの実験モデルも長所・短所があり、相互補完的に研究がなされてきた。本研究においても、近年の疾患iPS細胞研究の進歩、遺伝子改変技術の進歩などを組み入れた種々の老化モデルを用いた研究を行ってきた。これまでに老化発症・進展に関わる分子機序に着目した研究を行ってきており、カギとなる分子をいくつか特定している。それらの分子を遺伝子改変することにより、実験モデルで老化が制御できることが分かってきた。さらに同分子を標的として創薬展開することにより、老化制御を目的とした治療介入を目指して研究をおなっている。同分子はin vitroにおける老化表現型を強く進める作用があり、同分子を機能阻害すると、老化表現型が改善する。また遺伝子改変により、老化関連以外の大きな表現型を認めないことより、治療標的として適していることが示唆される。より詳細な分子機序を探索しており、治療方法の開発へつなげていく。
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