研究課題/領域番号 |
16K15421
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
正宗 淳 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90312579)
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研究分担者 |
濱田 晋 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20451560)
児玉 裕三 京都大学, 医学研究科, 助教 (80378687)
長船 健二 京都大学, iPS細胞研究所, 教授 (80502947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝性膵炎 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
分担研究者の長船らは、これまでにヒトiPS細胞から膵臓発生過程を再現し、二次元培養にて胚体内胚葉、膵前駆細胞を経てAMYLASE陽性の膵外分泌細胞を分化誘導する方法を開発した(Funato M., et al.投稿準備中)。本研究では、遺伝性膵炎の患者体細胞から樹立されるiPS細胞に本分化誘導法やその改良版を適用して、疾患膵腺房細胞の作製とそれを用いた病態解析を行う。H28年度には、PRSS1遺伝子変異を有する遺伝性膵炎患者2名よりiPS細胞を樹立し、初期化6因子の導入のためのエピゾーマルベクターの組み込みの無いiPS細胞株の選択を行うことを予定した。 本年度は検体採取と輸送・iPS細胞化の手順が適切に実施可能であるかの検証も含め、東北大学病院に通院するPRSS1遺伝子変異を有する遺伝性膵炎患者2名(45歳女性と53歳男性。共にP.R122H変異ヘテロ。)より同意取得の後に末梢血液を採取した。東北大学から京都大学への検体輸送は適切に実施可能であった。分離した単核球に初期化6因子(Oct3/4, Sox2, Klf4, L-Myc, Lin28, shp53)を遺伝子導入することでiPS細胞の樹立を行った。いずれの症例についても継代可能なiPS細胞の樹立が可能であった。2症例からそれぞれ10および11のiPS細胞株をストックし、ゲノムPCRを行い、エピゾーマルベクターの染色体への組み込みのない株が、それぞれ8および11株あることを確認した。現在、作製したiPS細胞株の維持培養と保管を継続している。今後は樹立したiPS細胞株を用いた胚体内胚葉への分化誘導実験や樹立細胞株のキャラクター解析を実施する予定である。また、膵前駆細胞の樹立・膵腺胞細胞への分化誘導包の改良・技術確立を並行して行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は実際の遺伝性膵炎患者からの検体採取と東北大学・京都大学間の検体輸送を適切に実施することが可能であり、採取検体全例でiPS化が可能であった。エピゾーマルベクターの組み込みがないiPS細胞の樹立も確認されており、次年度以降の分化誘導実験・疾患細胞モデル解析のための基盤形成は十分と思われる。以上の結果から、本研究の進捗状況はおおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度には、樹立した2名の患者由来iPS細胞の胚体内胚葉への分化誘導を行い、胚体内胚葉への分化能の高い株の中からさらに膵前駆細胞、膵腺房細胞への分化能の高いiPS細胞株を選択する。2名の患者より2, 3株を選択し、未分化マーカー遺伝子の発現、免疫不全マウスへの移植によるテラトーマ形成、胚様体形成による三胚葉成分への多分化能を確認する。さらに、核型解析による正常核型を有する株を選択し、以後の疾患解析に用いる。また膵前駆細胞から膵腺房細胞への分化誘導法の改良も並行して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は適切な遺伝性膵炎患者のリクルートに時間を要したため、iPS細胞の樹立までに時間がかかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は得られたiPS細胞株を用いた分化誘導実験やキャラクター解析のための網羅的解析を頻繁に行う予定のため、次年度助成金と併せて使用予定である。
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