研究課題/領域番号 |
16K15425
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
水腰 英四郎 金沢大学, 医学系, 准教授 (90345611)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シングルセル解析 / T細胞レセプター / ペプチドワクチン / immunome / 肝細胞癌 |
研究実績の概要 |
1)腫瘍内浸潤免疫細胞をシングルセルレベルで取得し、RNAを抽出する手法の確立:肝細胞癌における腫瘍内浸潤免疫細胞をシングルセルレベルで取得し、そのRNAを抽出する手法を確立するための検討を行った。まずはじめにgentle MACS Octo Dissociatorシステムを用いて調整・凍結保存された肝細胞癌の外科的切除サンプルを用いて検討を行い、同手法にて調整・凍結保存されたサンプルを用いて、シングルセルレベルでの発現遺伝子解析に必要な質の高いRNAが取得できることを確認した。 2)取得した細胞の発現遺伝子解析と細胞の同定ならびに機能予測:また、実際の発現遺伝子解析では、各単一細胞の発現遺伝子パターンによって、T細胞、NK細胞、マクロファージ等の各種免疫細胞の種類を同定することが可能であった。さらにこれらの免疫細胞が発現する表面マーカーの発現レベルをシングルセルレベルで解析することが可能であることが証明された。 3)T細胞レセプターの同定とレパートリー解析:腫瘍内浸潤免疫細胞におけるT細胞レセプターの同定とレパートリー解析を行う前に、同研究腫瘍の正確性を検証するために末梢血でのシングルレベルでのT細胞からのT細胞レセプターの同定とレパートリー解析を行った。これまでに肝細胞癌に対してペプチドワクチンの投与を行った症例の末梢血単核球を取得し、同ペプチドを認識するT細胞レセプターをもつT細胞の同定と、それらの単一細胞からのT細胞レセプターのクローニングを行い、研究手法の精度を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は以下の5つの項目から成り立っている。1)腫瘍内浸潤免疫細胞をシングルセルレベルで取得し、RNAを抽出する手法の確立を行う。次に2)取得した細胞の発現遺伝子解析により、細胞の同定ならびに機能予測を行う。3)取得した細胞がT細胞であった場合は、T細胞レセプターの同定とレパートリー解析を行う。4)癌組織全体の発現遺伝子解析データと取得細胞の種類、機能、TCRレパートリー解析結果を総合的に解析し、肝癌immunomeの全体像を明らかにする。5)4)で得られたデータと臨床データをリンクさせ、治療効果・予後に関連するimmunomeの同定を行い、immunome解析により肝癌の新規分類を行うための基盤情報を取得する。 このうち、本研究の最大の課題は肝癌組織浸潤免疫細胞のシングルセル解析の手法の確立であり、この課題に関しては研究初年度において手法が確立されたと考えている。今後は同手法によって保存検体の測定を行い、臨床データとリンクさせて解析を行っていく必要があるが、まずは研究手法が確立できたことにより、研究の進歩状況はおおむね順調と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は上述した、本研究項目5つのうち、以下の項目を遂行する予定である。3)取得した細胞がT細胞であった場合は、T細胞レセプターの同定とレパートリー解析を行う。4)癌組織全体の発現遺伝子解析データと取得細胞の種類、機能、TCRレパートリー解析結果を総合的に解析し、肝癌immunomeの全体像を明らかにする。5)4)で得られたデータと臨床データをリンクさせ、治療効果・予後に関連するimmunomeの同定を行い、immunome解析により肝癌の新規分類を行うための基盤情報を取得する。 特に当初の研究からの大きな計画変更はないが、肝癌組織に浸潤している免疫細胞を発現遺伝子解析で同定するだけではなく、同一症例の固定標本を用いて、多種類の抗体を用いた免疫染色によって、浸潤細胞の種類や部位の同定も併せて行い、これらのとの臨床データとのリンクや治療効果・予後との関連も検証し、肝細胞癌の新規分類法の確立するための基盤情報を取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
T細胞レセプターの同定とレパートリー解析において、腫瘍内浸潤免疫細胞におけるT細胞レセプターの同定とレパートリー解析を行う前に、同研究腫瘍の正確性を検証するために末梢血でのシングルレベルでのT細胞からのT細胞レセプターの同定とレパートリー解析を行ったが、取得できたT細胞の個数が当初の予定より少なかったために、解析費用が安価となった。具体的には、これまでに肝細胞癌に対してペプチドワクチンの投与を行った症例の末梢血単核球を取得し、同ペプチドを認識するT細胞レセプターをもつT細胞の同定と、それらの単一細胞からのT細胞レセプターのクローニングを行い、研究手法の精度を確認したが、得られた単一細胞の個数が予定より少なかった。さらに、T細胞レセプターの解析を行った際に、単一細胞から得られたT細胞レセプターの遺伝子数も当初の見込みより少なかったため、結果として解析費用が安価となった。
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次年度使用額の使用計画 |
T細胞レセプターの解析を行うための予備実験の費用が安価で、研究費を節約できたことから、その分を本研究の主目的である、肝癌組織浸潤T細胞の解析において、当初の予定よりもより多くのT細胞の取得を行い、レセプター解析を行う予定である。 また、シングルセル解析に使用する検体数も、当初の予定より増やして、より精度の高い結果を出す予定である。
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