研究課題/領域番号 |
16K15429
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (70335355)
|
研究分担者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (20397699)
疋田 隼人 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20623044)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 急性膵炎 / オートファジー |
研究実績の概要 |
急性膵炎の状態では、膵腺房細胞内でザイモゲン顆粒内の消化酵素の異所性活性化をきたしている。一方で、細胞内分解機構としてオートファジーが重要な役割を果たしている。そこで、オートファジーによる急性膵炎誘導時のザイモゲン顆粒の品質管理が、病態形成に与える影響を明らかにすることを目的として検討を行った。マウス急性膵炎モデルとして、セルレイン急性膵炎モデルを採用した。1時間おきに12回投与する方法と、1時間おきに8回投与することを2日間連続、計16回投与する方法を検討し、いずれの方法でも強い膵浮腫と血清アミラーゼ価、リパーゼ価の上昇を認め、強い急性膵炎が誘導できることを確認した。急性膵炎誘導時にオートファジー関連蛋白の発現をウェスタンブロッド法で確認したところ、コントロール群と比較し、LC3-Ⅱの増加とオートファジーを負に制御するRubiconの減少とを認め、オートファジーが亢進している可能性が考えられた。次にオートファジーが抑制された膵腺房細胞の検討のため、膵特異的Atg7欠損マウス(Pdx-Cre Atg7 fl/fl)を作成した。電子顕微鏡で4週齢の腺房細胞内にザイモゲン顆粒の有意な増加を認めた。また、膵特異的Atg7欠損マウスから採取した初代培養膵腺房細胞と野生型マウスから採取した初代培養膵腺房細胞では、セルレインおよびカルバコール刺激によるアミラーゼ分泌率に差を認めず、ザイモゲン顆粒の明らかな放出障害はないと考えられ、ザイモゲン顆粒はオートファジーによって分解されていることが示唆された。しかし膵特異的Atg7欠損マウスは4週齢より慢性膵炎用変化を認め、急性膵炎の検討には適さないと考えられた。そのためElaCre-ERマウスとAtg7 fl/flを交配し、薬剤投与誘導性膵腺房細胞特異的Atg7欠損マウスの作成に成功し、今後このマウスを用いて解析を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスセルレイン急性膵炎モデルの解析により、急性膵炎ではオートファジーの亢進が示唆された。オートファジー抑制マウスではザイモゲン顆粒の増加も確認でき、オートファジーによるザイモゲン顆粒の分解機構の存在も示唆された。薬剤誘導性膵腺房細胞特異的Atg7欠損マウスの樹立にも成功しており、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
膵臓腺房細胞においてin vivo fluxやex vivo fluxの手技を確立し、セルレインにより急性膵炎を誘導時のオートファジー亢進を確認する。また、ElaCre-ER Atg7 fl/flマウスを使用することで、急性膵炎誘導目的にセルレイン投与する際に、すでに慢性膵炎の状態になっている影響を排除した上で急性膵炎とオートファジーの関連を検討する。まず、ElaCre-ER Atg7 fl/flマウスにタモキシフェン投与後、Atg7発現をリアルタイムPCRで測定し、ノックダウン効率を確認する。薬剤誘導によるAtg7ノックダウン直後、もしくは直前にセルレインによる急性膵炎を誘導し、急性膵炎の経過の違いを検討する。また血清アミラーゼ値やリパーゼ値の推移の違い、膵組織学的膵炎重症度の違いを検討する。膵組織中のIL-1β、IL-18、IL-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインの違いをウエスタンブロットやリアルタイムPCRで検討する。上記の検討を通じて、急性膵炎におけるオートファジー促進の意義を検討する。
|