急性膵炎の状態では、膵腺房細胞内でザイモゲン顆粒内の消化酵素の異所性活性化をきたしている。一方で、細胞内分解機構としてオートファジーが重要な役割を果たしている。そこで、オートファジーによる急性膵炎誘導時のザイモゲン顆粒の品質管理が、病態形成に与える影響を明らかにすることを目的として検討を行った。マウス急性膵炎モデルとして、セルレイン急性膵炎モデルを採用した。昨年度からの検討により、コントロール群と比較し、LC3-Ⅱの増加とオートファジーを負に制御するRubiconの減少とを認め、オートファジーが亢進している可能性が考えられた。そこで、急性膵炎におけるオートファジー亢進の意義を検討するため、膵特異的Atg7欠損マウス(Pdx-Cre Atg7 fl/fl)を作成した。しかし膵特異的Atg7欠損マウスは4週齢より慢性膵炎用変化を認め、急性膵炎の検討には適さないと考えられた。そのためElaCre-ERマウスとAtg7 fl/flマウスを交配し、タモキシフェン誘導性の膵腺房細胞特異的Atg7欠損マウスを作成した。このマウスにタモキシフェンを連日7日間投与したところ、タモキシフェン投与開始3日目および7日目の膵臓ではウエスタンブロットによりAtg7の発現低下は確認できなかった。一方、タモキシフェン最終投与後3日目の膵臓でウエスタンブロットにてAtg7の発現低下を認めた。今後このタイミングで急性膵炎を惹起させ、急性膵炎時のオートファジー亢進の病態形成に与える影響を検討し、急性膵炎の新規治療標的の研究へと展開していきたい。
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