肝悪性腫瘍における放射線治療は、これまで肝臓の放射線耐用性の低さから限られたものとなっていたが、定位放射線療法(SBRT:stereotactic body radiation therapy)の登場により、正常肝への照射を少なくし腫瘍に限局して放射線照射することが可能となり、その適応範囲は拡大してきている。一方で、放射線による肝臓障害の予防法はなく照射線量自体を制限することでその影響を抑えるのみにとどまっている。今回我々は、放射線が肝臓に与える影響を肝再生能という面から評価を行うこととした。 前年度報告したように、C57BL/6Jマウスにおいて10Gy放射線照射群と非放射線照射群における肝再生能の評価を行った。C57BL/6Jマウスに対し体幹部限局放射線照射を行い、さらに照射肝に対し肝部分切除術を施行したところ、照射肝における肝臓ではKi67 陽性細胞、PCNA陽性細胞の低下およびp21の上昇を認め、さらに肝重量体重比の低下を認めた。 次に、肝細胞特異的p53欠損マウスおよび野生型マウス、それぞれに対し10Gy放射線照射群と非放射線照射群に振り分け、肝再生能の評価を行った。肝細胞特異的p53欠損マウスでは、放射線照射群は非放射線照射群に比し、肝重量体重比の低下を認めなかった。野生型マウスでは、放射線照射群は非放射線照射群に比しKi67陽性細胞数の低下、PCNA陽性細胞数の低下、p21の上昇、および細胞周期関連因子であるCyclinD1の上昇を認めていたが、肝細胞特異的p53欠損マウスでは、それらの変化を認めなかった。
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