• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

炎症性腸疾患発症におけるプロリン異性化酵素Pin1の役割と治療法への応用

研究課題

研究課題/領域番号 16K15431
研究機関広島大学

研究代表者

浅野 知一郎  広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 教授 (70242063)

研究分担者 中津 祐介  広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 講師 (20452584)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード炎症性腸疾患 / 潰瘍性大腸炎 / Pin1 / 炎症
研究実績の概要

我々は、腸管障害と代謝異常との関連を研究する過程で、偶然、DSS負荷による大腸炎を発症したマウス腸管において、Pin1のタンパク量が40-50倍にも上昇していることに気付いた。免疫染色を行うと、Pin1の高発現細胞は、血球系細胞と間質系細胞の両方に認められ、腸上皮においてもPin1の発現量は有意に増加していた。次に、我々は、この著増しているPin1がDSS惹起潰瘍性大腸炎の発症に関与している可能性を考慮し、野生型マウスとPin1 KOマウスに3% DSS含有水を7日間飲水投与した後にマウスより大腸を摘出した。野生型マウスでは、DSS投与により高度な大腸炎が惹起され大腸上皮の壊滅的損傷が認められたのに対し、Pin1 KOマウスではDSS投与による上皮組織の損傷が抑制され(杯細胞の維持等)、炎症性サイトカインの上昇、活性型カスパーゼの上昇(アポトーシスのマーカー)もすべて抑制されていた。
これらの結果は、Pin1の発現増加がIBDの発症に関与している可能性を強く示唆するものである。続けて、腸管上皮特異的なPin1 KOマウスを作製したが、これはIBDを正常マウスと同様に発症した。これに対し、骨髄移植によって、血球系細胞のPin1を欠失させたマウスを作製したところ、このマウスはIBDの発症に抵抗性を示した。従って、炎症系細胞のPin1がIBDの発症に関わっている可能性が示唆された。Pin1 KOマウスが正常な腸管機能を有していることを考慮すると、腸管にPin1阻害薬を作用させた場合、正常な腸管機能に影響を与えず、潰瘍性大腸炎の改善が期待できるのではないかと期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

全身的なPin1 KOマウスに加え、各細胞特異的なPin1 KOマウスも作製することが出来、これを実験に用いることで、血球系細胞のPin1が重要であることを突き止めることが出来た。ここから、腸管上皮下に浸潤している血球系細胞において、Pin1の役割を解明するkとが重要と考え、精力的に研究を進めている。従って、順調な進行状況である。

今後の研究の推進方策

(1)腸管上皮下に浸潤している血球系細胞におけるPin1の役割を解明する。
(2)Pin1の新規阻害薬を、薬学部のグループと開発し、これをマウスに投与することで、IBDの発症が抑制できるかを検討する。
(3)ヒトIBD患者の病変部位におけるPin1発現量の検討:広島大学付属病院で診療を受けた潰瘍性大腸炎患者及びクローン病患者からのbiopsyサンプルを用いて、Pin1に対する免疫染色を行い、発現量を測定する。消化器内科のグループの協力を得て、病巣のPin1発現量と年齢、性別、体重、治療薬剤などとの相関性について、調査する。

次年度使用額が生じた理由

殆ど、問題なく使用してきたが、年度末に8,122円余ったため、次年度の使用となった。

次年度使用額の使用計画

額は、8,122円と小さく、一般的な実験遂行のための経費として用いる。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] USP15 attenuates IGF-I signaling by antagonizing Nedd4-induced IRS-2 ubiquitination2017

    • 著者名/発表者名
      Fukushima, T., Yoshihara, H., Furuta, H., Hakuno, F., Saeki, Y., Iemura, SI., Natsume, T., Nakatsu, Y., Kamata, H., Asano, T., Komada, M., Takahashi, SI.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun

      巻: 484 ページ: 522-528

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Reduced SHARPIN and LUBAC Formation May Contribute to CCl4- or Acetaminophen-Induced Liver Cirrhosis in Mice.2017

    • 著者名/発表者名
      Yamamotoya, T., Nakatsu, Y., Matsunaga, Y., Fukushima, T., Yamazaki, H., Kaneko, S., Fujishiro, M., Kikuchi, T., Kushiyama, A., Tokunaga, F., Asano, T., Sakoda, H.
    • 雑誌名

      Int. J. Mol. Sci.

      巻: 18 ページ: 326

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Involvement of Resistin-like molecule beta in the development of methionine-choline deficient diet-induced non-alcoholic steatohepatitis in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Okubo H., Kushiyama, A., Sakoda, H., Nakatsu, Y., Iizuka, M., Taki, N., Fujishiro, M., Fukushima, T., Kamata, H., Nagamachi, A., Inaba, T., Nishimura, F., Katagiri, H., Asahara, T., Yoshida, Y., Chonan, O., Encinas, J., and Asano, T.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 20157

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Physiological and Pathogenic Roles of Prolyl Isomerase Pin1 in Metabolic Regulations via Multiple Signal Transduction Pathway Modulations.2016

    • 著者名/発表者名
      Nakatsu, Y., Matsunaga, Y., Yamamotoya, T., Ueda, K., Inoue, Y., Mori, K., Sakoda, H., Fujishiro, M., Ono, H., Kushiyama, A., and Asano, T.
    • 雑誌名

      Int. J. Mol. Sci.

      巻: 17 ページ: E1495

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] IL-17A synergistically enhances TNFα-induced IL-6 and CCL20 production in 3T3-L1 adipocytes.2016

    • 著者名/発表者名
      Shinjo, T., Iwashita, M., Yamashita, A., Sano, T., Tsuruta, M., Matsunaga, H., Sanui, T., Asano, T., and Nishimura, F.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 477 ページ: 241-246

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Role of uric acid metabolism-related inflammation in the pathogenesis of metabolic syndrome components such as atherosclerosis and non-alcoholic steatohepatitis2016

    • 著者名/発表者名
      Kushiyama, A., Nakatasu, Y., Matsunaga, Y., Yamamotoya, T., Mori, K., Ueda, K., Sakoda, H., Fujishiro, M., Ono, H., and Asano, T.
    • 雑誌名

      Mediators Inflamm.

      巻: 2016 ページ: 8603164

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 性ホルモン結合グロブリン(SHBG)による脂肪量減少効果と抗炎症効果2016

    • 著者名/発表者名
      山崎 広貴、櫛山 暁史、迫田 秀之、藤城 緑、山本屋 武、菊池 貴子、金子 直、浅野 知一郎
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-21
  • [学会発表] Pin1を介した熱産生調節機構及び肥満との関係解明2016

    • 著者名/発表者名
      松永 泰花、中津 祐介、櫛山 暁史、菊池 貴子、山本屋 武、鎌田 英明、浅野 知一郎
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-21
  • [学会発表] Trk-fused gene(TFG)の膵β細胞における役割の解明2016

    • 著者名/発表者名
      山本屋 武 、中津 祐介、迫田 秀之、藤城 緑、山崎 広貴、菊池 貴子、浅野 知一郎、櫛山 暁史
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-21
  • [学会発表] プロリン異性化酵素Pin1を介した膵β細胞調節機構の解明2016

    • 著者名/発表者名
      中津 祐介、森 馨一、松永 泰花、山本屋 武、藤城 緑、石原 寿光、浅野 知一郎
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-21
  • [学会発表] 肝外キサンチンオキシダーゼのインスリン抵抗性への関与2016

    • 著者名/発表者名
      櫛山 暁史、菊池 貴子、山崎 広貴、迫田 秀之、藤城 緑、浅野 知一郎、岩本 安彦
    • 学会等名
      第59回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      国立京都国際会館
    • 年月日
      2016-05-20 – 2016-05-21

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi