研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、まず、培養ヒト血管内皮細胞を用いて、動脈硬化の初期イベントである単球接着に関与するmicroRNA (miRNA) を網羅的に同定した。その中から、特にmiR-3679-5pに着目して解析したところ、miR-3679-5pは単球接着を抑制することを見出した。更に、このmiRの標的遺伝子として2つのヒストン修飾酵素KDM7A, KDM6Aを同定し、その機能解析を細胞レベル、マウス個体レベルで行った。その結果、この2つの酵素は相乗的に機能し、血管の慢性炎症を惹起することを発見した。
血管生物学
本研究では、世界で初めて、「動脈硬化」という血管の慢性炎症を惹起するスタートとなるイベントに関与する2つの酵素を発見した。これら酵素はヒストンの脱メチル化酵素であることから、DNAの塩基配列変化を伴わない遺伝子発現制御機構である「エピゲノム」が、動脈硬化にも寄与していることを示した重要な成果である。また、血管の老化は臓器の機能低下、しいては個体の機能低下に繋がることから、これら酵素の阻害剤は新たな抗動脈硬化薬としての可能性を秘めている。今後は、この酵素の働きを詳細に調べることで、血管特異的な機構を明らかにすることが重要だと考えられる。