研究実績の概要 |
肺胞蛋白症がGM-CSF受容体の変異により生じ、正常のマクロファージを肺へ移植することにより治療できることが報告されている。(Nature 2014;54:450)。これまでの研究において、マクロファージ選択的にHypoxia-inducible factor (HIF)-1αを欠損したマウスでは低酸素暴露(10%O2, 3週間)による肺動脈圧の上昇が抑制されることを明らかにした(現在論文投稿中)。そこで、HIF-1α欠損マクロファージの肺胞移植に同様の効果があるかを本年度検討した。 マクロファージ選択的HIF-1α欠損マウスの骨髄由来マクロファージを正常マウスの肺に移植した。浅い麻酔下で、口腔内後部に200万細胞/50μl(PBS)を投与し、呼吸により肺への移植をはかった。その後低酸素チャンバーにて3週間飼育した。正常マウス由来のマクロファージを投与した群に比べ、HIF-1α欠損マクロファージを投与したマウスでは肺高血圧が軽減されていた (右室収縮期血圧48mmHg 対 24mmHg, n=2)。HIF-1α欠損マクロファージを移植し、正常酸素濃度で飼育したマウスの右室収縮期圧は21mmHg(n=5)であったので、肺高血圧モデルの作成には問題なく、HIF-1α欠損マクロファージの移植により肺高血圧が軽減されたものと考えられる。このHIF-1α欠損マクロファージではCre¬-recombinaseが発現している。その抗体により肺より抽出した蛋白をウエスタンブロット法にて解析したところ、弱いながらCreの発現があり、投与したマクロファージが肺内へ到達していると考えられた。 まだ実験数が少ないため、今後再現性を確認するとともに、移植したマクロファージの局在や肺における遺伝子発現の変化などを検討していく必要がある。また左室肥大・心不全モデルなどでも検討したい。
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