平成29年度は、Factor X (以下LYPD1)の機能解析を行った。FLAG-LYPD1をpcDNA3.1 vectorに挿入後、COS7細胞に遺伝子導入し、細胞抽出液より抗DYKDDDDK tag抗体マグネットビーズを用いてLYPD1リコンビナントタンパクを精製した。得られたタンパクを、FLAG抗体およびLYPD1抗体を用いてウェスタンブロット解析を行うと、同一サイズのバンドが検出されたことから、FLAG-LYPD1融合タンパクが精製されたと考えられた。 ヒト皮膚線維芽細胞はLYPD1の発現が極めて低く、共培養したヒト臍帯静脈血管内皮細胞のネットワーク形成を促進することをこれまでに確認している。そこで同共培養環境にリコンビナントLYPD1を添加したところ、皮膚線維芽細胞による血管内皮細胞ネットワーク形成が抑制された。 LYPD1の発現が高いヒト心臓線維芽細胞は、共培養するヒト臍帯静脈血管内皮細胞のネットワーク形成を抑制する一方、LYPD1の発現をsiRNAで抑制した心臓線維芽細胞との共培養では血管内皮細胞のネットワーク形成が回復することを確認している。そこで、siRNAでLYPD1発現を抑制したヒト心臓線維芽細胞とヒト臍帯静脈血管内皮細胞の共培養環境にリコンビナントLYPD1を添加したところ、再度血管内皮細胞のネットワーク形成が抑制されたことから、LYPD1に対するsiRNAを遺伝子導入したヒト心臓線維芽細胞における血管内皮細胞のネットワーク形成の回復は、LYPD1の発現の低下によるものであることが確認された。 最後にヒト臍帯静脈血管内皮細胞をマトリゲル内で培養することで得られる管腔形成へのLYPD1タンパクの影響を評価したところ、LYPD1タンパクは、濃度依存性に血管内細胞の管腔形成を抑制したことから、LYPD1タンパク自体に血管新生抑制作用があることが確認された。
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