研究課題/領域番号 |
16K15450
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
下内 章人 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (80211291)
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研究分担者 |
近藤 孝晴 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (20135388)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水素分子 / 活性酸素 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
目的:生体内水素分子(H2)の挙動に関する基礎的検討として腸内嫌気性発酵性の内因性H2には未知の運搬物質が存在し,一部は能動的に肝臓内で抱合貯蔵され必要に応じて放出されること,生体内ROS-抗酸化バランスにおいて腸内嫌気性発酵性H2は内因性抗酸化物質として抗酸化機序に関与することを検証することを目的とした. 成果:9週齢のSPF-SD雄ラットを麻酔・人工呼吸下にて血圧・動脈血ガスが安定した状態で呼気と動脈血を採取した後,ただちに開腹/開胸し,腸管・肝臓・肺・心の各臓器を摘出した.腸管は十二指腸上端と直腸下端を結サツ後,糞便が漏れないように一塊として摘出した.各臓器は生理食塩水で洗浄後,放出量はアルミバッグに摘出した臓器を封入し, 一度バッグ内のガスを抜いた後に一定量の純空気を入れ保持後,ガス分析を行った.臓器内含有量の計測は肺,肝,上部小腸,下部・上部結腸をガスタイトチューブ内に迅速に封入,粉砕後,遠心分離を行い,ヘッドスペースのガス分析を行った.さらに血液中の低分子ガス濃度の勾配をみる目的で,大動脈,右心室腔,肝静脈,門脈の順に迅速に血液を採取し,密閉ガラス瓶内に封入,震盪後,ヘッドスペースのガス濃度から血液H2濃度を算出した.H2の各臓器での単位重量当りの含有量は,肺に比べ,肝臓,腸と上昇し,腸の中では,上部結腸が一番高く,バクテリアが多く存在しているためと考えた.さらに血液中のH2濃度を門脈血,肝静脈,右心室腔内,大動脈にわたるカスケードをみたところ,H2分子は血流の走行に沿って有意な低下を示し,特に呼気により腸内発酵水素の大部分は呼気に放出されていることが分かった.門脈と肝静脈血の前後におけるH2濃度の低下は門脈・肝静脈の血流比から推定される低下分よりはるかに大きく,肝臓内での水素分子が活性酸素により一部が消去されたことが推測された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定は,腸内嫌気性発酵性の内因性H2には未知の運搬物質が存在し,一部は能動的に肝臓内で抱合貯蔵され必要に応じて放出されること,生体内ROS-抗酸化バランスにおいて腸内嫌気性発酵性H2は内因性抗酸化物質として抗酸化機序に関与することを検証することを目的としたが,肝臓内での水素分子の一部消去の機序を明らかにする予定であったが,現象は確認できたが,その詳細な機序については解決できなかったため
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今後の研究の推進方策 |
本研究は(1) 生体内水素分子の挙動に関するin vitro,in vivo 基礎的検討,(2)「ROS-抗酸化バランスにかかわる内因性H2 の役割」を中心に酸化ストレスが関わる疾患モデルを用いた詳細な検証,(3)心不全病態モデルならびに(4)生活習慣におけるROS-抗酸化ストレスのバランス評価を検討することにあった.平成28年度は(1) 生体内水素分子の挙動に関する基礎的検討として,「仮説1:腸内嫌気性発酵性の内因性H2 には未知の運搬物質が存在し,一部は能動的に肝臓内で抱合貯蔵され必要に応じて放出される」ならびに「仮説2:生体内のROS-抗酸化バランスにおいて腸内嫌気性発酵性H2 は内因性抗酸化物質として抗酸化機序に関与する」を検証することを目的とした.初年度に達成できなかった項目をさらに推進させ,免疫組織化学的な検索と分子機序の解明を行う,
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は既存の実験設備消耗品を用いて研究計画を遂行したが,途中,実験システムを改良するための物品購入が必要になったものの年度内購入が難しく,次年度に購入予定となったため
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次年度使用額の使用計画 |
in vivo動物実験中における臓器表面からの活性酸素種を計測するためのレーザー誘起蛍光法に必要な特殊チャンバーの制作費(オーダーメードの特注品と周辺消耗品費)の購入に充当させる.
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