特記すべき疾患のない健康成人を対象とし,水素水摂取に伴う呼気水素濃度を検討したところ,一定量の水素水を15分で飲水したところ,BMIと水素排気量の間には有意ではなかったが,緩やかな負の相関を認めた.すなわち,肥満者は水素水飲水後の呼気水素濃度のピーク値ならびに曲線下面積の水素排気量曲線下面積も低下傾向にあった.確定的なことは言えないものの,肥満者では脂肪組織内あるいは水素水飲水後に取り込まれる経路に当たる肝臓内未確認化合物に水素分子が捕捉されるか,あるいは活性酸素により水素分子の消去のいずれかが考えられた.他方,研究代表者らは「生体微量ガス成分の調査」の集計結果を元に解析したところ,呼気H2は種々の生活習慣(食生活・運動など)と関連すること,男女ともに加齢に伴い有意に低下することが分かった.さらに地域住民を対象に「ストレスと睡眠の関連に関する調査」に参加した被験者を対象として,在宅での呼気水素濃度の変動の解析を行ったところ,睡眠前後における呼気水素濃度較差は高齢者群で有意に低下することが判明した.また,心不全患者を対象とした睡眠前後の呼気水素濃度を計測したところ,重症心不全では睡眠前後の呼気水素濃度較差は有意に大きくなり,心不全の酸化ストレスに伴う水素分子の消費が高まることが推察された.生体内では水素分子が活性酸素を消去するという直接的な証拠を捉えることはできなかったが,臓器内での水素分子の残留,あるいは消滅する生理生化学的な解明が今後の研究課題として残った.さらに呼気水素と疾患の関連とその機序については未解明なところが多く,さらに多くの臨床研究を展開する必要がある.
|