研究課題/領域番号 |
16K15451
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
宍戸 稔聡 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (60300977)
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研究分担者 |
清水 秀二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (80443498)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心機能 / 収縮不全 / 拡張不全 / 心筋特性 / 虚血心 |
研究実績の概要 |
心機能評価として主に収縮機能(弾性項)からの評価が行われているが、心室或いは心筋特性としては弾性項(e)に加えて粘性項(r)が存在する。本研究では、心室局所を線形粘弾性でモデル化し、局所に正弦波微小振動(X)を加え発生する応力(F)を計測し、その関心領域における運動方程式「F = m(d2X/dt2)+r(dX/dt)+eX」(mは質量)を、伝達関数法を用いて解くことから、粘性値rの評価を試みるものである。平成28年度はイヌ摘出交叉血液灌流心による等容収縮心標本を用いて、左室自由壁に小型加振器により±0.2mm以下の微小振動を加え、心室壁接触部に装着したフォースセンサーから得られた応力を測定し、関心領域内における変位-応力関係(伝達関数:F/X)を求めた。入力する微小振動には60-120Hz間の複数の正弦波振動を用いた。既報の通り伝達関数の実数部は角速度の二乗と比例関係に有り、それから求められる関心領域の質量は約2gであり十分に狭い範囲での心室特性を求めているものと推測された。また、eは左室圧容積関係から求められる左室時変エラスタンスと比例関係にあり拡張末期に最小、収縮末期に最大となる現象が観察された。次に、伝達関数の虚数部と角速度の関係を求めたところ、両者の関係は正の線形関係にあり、その傾きは拡張末期で小さく、収縮末期に向かって経時的に増大する現象が観察された。すなわち心室粘性項も心周期に同期して増加する「時変」である事がわかった。また、冠動脈短時間閉塞により局所心筋に虚血を誘発したところ、虚血中、拡張末期弾性値の変化は大きなものでは無かったが、一方、拡張末期粘性値は虚血直後より増加し、再灌流後15分でも虚血前値に比べて増加しており、粘性値が虚血に鋭敏に反応することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は本研究計画の初年度であり、時変粘性項を観察できた点からも、進捗状況は十分達成しており、おおむね順調に進展していると判断する。また、虚血モデルにおいて、収縮項に先行して粘性項が増大する現象が観察され、次年度以降、この現象について重点的に検証を行う事で今後の展開も期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は当初計画では疾患動物モデルを用いた計画が主体となっていたが、虚血モデルによる実験を更に追加実施する必要性があることがわかったので、モデル統合に必要な情報をそちらの実験系で収集する。また、時変粘性項の時変成分は、収縮要素の変化に伴った、心筋の内部抵抗の経時的な増大に伴うものであることが予想されるので、その点についてはシミュレーション等も用いて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた大きな要因は、予定していた国際学会への参加を行わなかったことと、一部の実験(疾患動物モデル作成等)を次年度に繰り越したことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
統合モデル作成のためのシミュレーション構築に使用することと、成果を学会等で発表するための旅費および論文投稿にかかる費用を計上する。 今後とも、研究進捗を勘案しながら、無駄な支出をせず効率よく運用する予定です。
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