研究課題/領域番号 |
16K15452
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
白井 幹康 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 特任研究員 (70162758)
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研究分担者 |
土持 裕胤 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (60379948)
Pearson James 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (30261390)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 循環器・高血圧 / 糖尿病 / 心筋拡張機能障害 / 心筋収縮タンパク質 / 放射光X線回折法 |
研究実績の概要 |
糖尿病は、Heart Failure with preserved Ejection Fraction(HFpEF)の重要な誘因であるが、その根本病態は未解明である。我々はこれまで、独自に開発した放射光X 線心筋回折法を、1型糖尿病モデルラットのin vivo 拍動左心室に応用して、拡張期末におけるミオシン頭部のアクチンからの解離数は、対照と比較して、増大していること(心内膜下層側でより顕著)を見出し、この解離増大の程度と心臓拡張能(dP/dtmin)の低下は相関することを明らかにした。 本研究の28年度では、糖尿病によるHFpEF への進展病態の解明を目指し、マクロ的な機能異常がないごく初期の2型糖尿病ラット(Goto-Kakizakiラット、10週齢)で、1型糖尿病ラットで見出した心筋収縮タンパク質の機能異常が早期発見できるかを放射光X線回折法で調べた。その結果、心内膜下層心筋を中心に、1型糖尿病ラットと同様の拡張期のクロスブリッジ数の減少(ミオシン頭部のアクチンからの解離数の増大)が検出された。この心筋収縮タンパク質機能異常は、心外膜下層では検出されなかった。また、Goto-Kakizakiラットの摘出心筋の免疫組織化学検査並びにWestern blotting解析からRho-kinaseの発現増大が見いだされ、この酵素の阻害薬(fasudil)をラットに慢性投与すると、検出した心筋収縮タンパク質機能異常は大きく改善することも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
28年度は、我々が1型糖尿病モデルラットで見出した心筋収縮タンパク質機能異常が、初期の2型糖尿病モデルラットで見出せるかを明らかにすることが主目的であった。この点では目的は達成できた。他方、収縮タンパク質の機能異常に対する薬剤の効果に関するpreliminary studiesを優先したため、当初、28年度に予定した免疫組織化学法によるROCK1/2、eNOS/iNOS、PKC、β1, 2, 3 受容体、AT1 受容体、renin、ACE並びにfibrosis とoxidative stress(nitrotyrosine, DHE)の心室の異なる部位及び異なる心筋層での分布計測並びにreal time PCR によるROCK1/2、PKC-β、AT1 受容体、renin、ACE、β受容体の遺伝子発現、Western Blotting によるROCK1/2, PKCβ、ACE、renin、AT1 受容体、eNOS/iNOS発現計測はやや遅れ、現在進めている。ROCK発現の計測は終了した。
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今後の研究の推進方策 |
28年度のpreliminary studiesから、β1 受容体遮断, Atenolol(10 mg/kg/day)およびAT1 受容体遮断, Losartan(10mg/kg/day)、PKCβ遮断, LY333531(1mg/kg/day)が効果を有する可能性が示唆された。これらの薬剤の効果を比較することで、初期の糖尿病での心筋収縮タンパク質機能異常を起こすシグナル伝達機構を明らかにしたい。同時に分子生物学的検査を進め、分子病態の解明を目指す。
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