研究課題
昨年度、初期の2型糖尿病モデルラット(10週齢GKラット)の心臓で、拡張期末のミオシン頭部のアクチンからの解離数増大が生じており、さらに、Rho-kinase阻害薬(ファスジル)がこの分子動態異常を改善することを明らかにした。そこで、本年度は、このファスジルの改善効果が、進行した糖尿病+高血圧モデルラット(8週齢GKラットに2か月間の高食塩食を負荷)で有効かどうかを、確立した心不全治療薬であるアンギオテンシンIIタイプ1受容体遮断薬、ロサルタンの効果と比較することで調べた。その結果、ファスジルは拡張期末の解離数増大を改善するが、ロサルタンは改善しないことが分かり、ファスジルは心臓拡張機能障害の改善薬の候補となり得ると考えられた。また、ミオシンとアクチンの結合・解離を調節するmyofilament proteins (myosin-binding protein C, troponin I, myosin regulatory light chain )のリン酸化状態をWestern解析したが、GKラットとWistarラット(対照)間で有意差が見いだせなかった。そこで、心筋細胞の構造タンパク質であるタイチン(ミオシンの位置の安定性や弾力性・伸展性を調節する)のリン酸化状態を調べた結果、GKでは有意に減少していた。また、心筋のsoluble guanylate cyclase(sGC)発現とPKG活性の低下を同時に認めたことから、タイチンリン酸化減少にsGC-PKGシグナリング障害が関与すると推定された。以上から、心臓拡張機能障害の根本的機序にタイチンリン酸化障害を介した拡張期末の心筋収縮タンパク質機能異常の関与が示唆され、その分子基盤としてRho-kinase活性化によるROS発生増大とそれに伴うNO‐sGC‐PKGシグナリングの障害の可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)
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