研究課題
Th1細胞の分化を司る転写因子であるT-betを高発現するマウス(T-bet-tgマウス)がGM-CSF非依存的に肺胞蛋白症を自然発症することを発見し、その発症機構の解析を行ってきた。同マウスを用いた研究で、T細胞におけるT-bet高発現が持続的なTh1環境をもたらし、骨髄および末梢血単球系細胞の成熟を抑制し、肺組織におけるマクロファージのフェノタイプを変化させることで肺胞蛋白症が引き起こされること、M-CSFが単球系細胞の成熟を促進し、肺胞蛋白症の形成を抑制することを明らかにした。最終年度は人の肺胞蛋白症でもマウスと同様の機序により肺胞蛋白症が形成されるか、自己免疫性、および続発性肺胞蛋白症の肺組織を用いて検討した。続発性肺胞蛋白症の肺組織におけるT-bet発現は自己免疫性肺胞蛋白症肺組織の10倍以上のT-bet発現がみられた。続発性肺胞蛋白症の肺組織ではT-bet陽性リンパ球の浸潤が免疫染色で確認されたが、自己免疫性肺胞蛋白症の肺組織ではリンパ球浸潤自体がわずかで、T-bet陽性細胞は見られなかった。以上より、続発性肺胞蛋白症患者においてT-betが病態に関与する可能性が示唆された。T-bet-tgマウスの全身解析を行うと、関節の炎症、および骨髄ではマクロファージ活性化症候群の病理像である血球貪食症候群を認めた。これらは、肺における肺胞蛋白症を含め、全身型若年性特発性関節炎の病理所見と類似するものと考えられた。本研究を発展させ、全身型若年性特発性関節炎とT-bet高発現との関連を今後探索していきたい。
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American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology
巻: 61 ページ: 525~536
10.1165/rcmb.2018-0109OC