研究課題
Elongation of long-chain fatty acids family member 6 (Elovl6) は脂肪酸鎖長の伸長作用を有する酵素であり、Ⅱ型肺胞上皮細胞に発現し、肺サーファクタントを構成するリン脂質の脂肪酸組成を調節する酵素として重要な役割を果たしていると考えられる。本研究では、肺線維症の病態におけるElovl6の関わりについて検討を行った。ブレオマイシン(BLM)肺臓炎マウスではElovl6の発現低下を認めた。また、Elovl6欠損マウスにBLMを投与すると、野生型マウスと比べて肺線維症の増悪が認められた。次に、Elovl6欠損マウスの肺から脂質を抽出し脂肪酸分画を測定したところ、C16飽和脂肪酸であるパルミチン酸の増加およびC18不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸の減少が認められた。さらに、野生型マウスにBLMを投与すると、Elovl6欠損マウスに近い脂肪酸分画の変化が認められた。パルミチン酸はアポトーシスを誘導することが知られていることから、Elovl6欠損マウスの肺におけるTUNEL染色、酸化ストレスの程度およびCaspase3タンパクの発現を検討した。その結果、Ⅱ型肺胞上皮細胞にTUNEL陽性細胞およびROS産生の増加が認められ、活性型Caspase3が有意に増加した。また、線維化に密接に関与するTGF-β1発現の増加も認めた。さらに、培養マウスⅡ型肺胞上皮細胞 (LA-4)にElovl6をノックダウンさせると、Elovl6欠損マウスと同様の脂肪酸組成の変化、アポトーシスの亢進、TGF-β1発現の増加および酸化ストレスの亢進が認められた。以上の結果から、Elovl6は肺線維症の発症・進展に深く関与していると考えられ、肺における脂質代謝および脂肪酸分画のバランスが肺のホメオスタシスの維持に重要であることが示唆された。
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Cardiovasc Res.
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